インスタリムへの出資を決定
印刷する東京大学協創プラットフォーム開発株式会社(本社:東京都文京区本郷、代表取締役社長 植田浩輔、以下「東大IPC」)が運営するオープンイノベーション推進1号投資事業有限責任組合(以下「AOI1号ファンド」)は3DプリンティングおよびAI技術を活用した義足製造ソリューション事業を日本・インド・フィリピンで展開するインスタリム株式会社(本社:東京都隅田区、代表取締役CEO:徳島泰、以下「インスタリム」)へ1.5億円の出資を決定しました。
今回のインスタリム社への投資は、JICベンチャー・グロース・インベストメンツ株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長CEO 鑓水英樹)、みずほキャピタル株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長 半田邦雄)、株式会社アイティーファーム(IT-Farm)(本社:東京都新宿区、代表取締役:黒崎守峰)、未来創造キャピタル株式会社(本社:東京都港区、代表取締役:竹内信房)、信金キャピタル株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長 鈴木存)リブライトパートナーズ株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役 兼 ファウンディングゼネラルパートナー 蛯原健)、ダーウィンベンチャーズ(Darwin Venture Management Corporation、本社:台北市、代表:方頌仁)、KVIF-Ⅰ投資事業有限責任組合(京セラベンチャーズ)との共同出資になります。
義足の購入を待つ世界4,000万人、途上国を中心に増加する糖尿病患者数
下肢を切断する原因の8割以上(※1)が糖尿病性壊疽などの血管系疾患が由来といわれています。加えて糖尿病は無症状で進行するため、特に定期的な健康診断がない開発途上国においては、「気がついたら脚が壊疽している」状況も少なくなく、やむを得ない下肢切断が行われているのが現状です。
糖尿病患者数は2045年には7.8億人に達すると見込まれており、その9割程度以上が、新興国・開発途上国の患者ともいわれております(※2)。その一方で、利用薬であるインスリン等は世界的に不足し続けており、この糖尿病の激増にかかわる社会問題の根本的な解決策は未だ見つかっていません。
また、下肢切断の後に必要となる義足は一般に、一人一人の体に合わせて医学的に最適な形状を手作りでアナログに製作する必要があるため、義肢装具士の医学知識と技術力が必要です。よって、義肢装具士を育成するための公的な福祉予算が不十分な中進国以下の国においては、義肢装具士の不足により十分な数の義足を提供することができていません。
開発途上国を中心に義足を購入できない方が、世界に4,000万人以上(※3)存在しており、義足を購入できない方の就労の難しさなど、副次的な社会課題も生まれています。
義足製造をDXし、義肢装具士一人当たりの義足製造数を10倍以上へ
この社会課題を解決するために、インスタリムは義足製造をアナログ(手作り)製造から3Dプリンティング技術とAIによる設計最適化を組み合わせることで、義肢装具士一人当たりの義足製造数を10倍以上まで増やすことに成功しました。同社は、「必要とする全ての人が、質の高い義肢装具を手に入れることができる世界を実現する」というビジョンの実現を目指しています。
同社の義足は、フィリピン・インドですでに5,000本以上の製造・販売実績があり、ソリューションとしては各国の公的機関等も含めて、9組織に導入されています。
またインド子会社には、3Dプリンタ製造工場、3Dプリンタ材料(フィラメント)製造工場を設置し、インドを拠点に世界各国に向けたライセンス事業が推進されています。
東大IPCは、第2回「1stRound」の前身となる「東大IPC起業支援プログラム」でインスタリム社を採択しました。この度、アカデミアの成果を活用しつつオープンイノベーションを推進するとともに、社会的意義が大きく、かつ新興国を中心とする義足の課題と向き合う同社の事業展開を高く評価し、投資実行にいたりました。今後は、新たにインドネシアや、アジアを越えウクライナ・ナイジェリアへの多国同時展開を加速させていくべく、インスタリム社を支援してまいります。
インスタリム株式会社 代表取締役CEO 徳島泰 コメント
2019年に「第2回東大IPC起業支援プログラム」の採択を受けてから5年間の長きにわたり、比類ないほどの多大なご支援をいただいてきましたが、念願叶ってこの度、弊社のシリーズB-エクステンション資金調達ラウンドにご参加いただくことができ、東大IPC様とワンチームとなって事業に邁進できる体制になれたことを、本当に嬉しく思っています。
5年以内に全グローバル・サウスエリアの網羅を目標に、これまで以上に「必要とする全ての人が、質の高い義肢装具を手に入れることができる世界」の実現に向けて事業推進を加速してまいります。
東京大学協創プラットフォーム開発株式会社 マネージャー 川島奈子 コメント
この度はインスタリムが、安価で高品質な義足提供という社会的意義の大きい事業に取り組みながら、収益性を両立しつつある点を高く評価し、出資に至りました。既存の義足は一つ一つ手作業で作られており、新興国の貧困層の方々に届かないのが課題でした。この課題を解決すべく、様々なチームが3Dプリンタ義足に取り組んできましたが、インスタリムは現地にしっかりと根を張ってプロダクトとオペレーションを磨きこみ、世界初の3Dプリンタ義足の実用化を達成しました。また、インスタリムは現在、義足ユーザーが最も多いインドを押さえつつあり、両立する真の持続可能なサービスに進化せんとしています。インスタリムチームの一員として、インスタリムの安価で高品質な義足によって、世界中の義足ユーザーが生き生きと活動する世界を目指し、支援して参ります。
日本のオープンイノベーション活動の発展寄与を目指すAOI1号ファンド
AOI1号ファンドは、東京大学周辺でのオープンイノベーション活動の推進を目的とし、「企業とアカデミアとの連携によるベンチャーの育成・投資」というコンセプトで2020年に組成されました。本ファンドでは、各業界のリーディングカンパニーと連携した新会社設立やカーブアウトベンチャー、および彼らのアセットを有効活用するベンチャーへの投資を通じ、新たな分野におけるオープンイノベーションの成功事例創出を目指します。
※1:8割以上=インスタリム社(フランチャイズ会社“Instalimb Solutions Philippines”)患者データベースより算出。
※2:8割以上=インスタリム社(フランチャイズ会社“Instalimb Solutions Philippines”)患者データベースより算出。糖尿病患者の増加予測=Diabetes around the world in 2021 「https://diabetesatlas.org/」より抽出し、グラフ化した。
※3: 4500万人以上=世界の四肢切断者が全世界で6,500万人(以下論文より引用:McDonald CL, Westcott-McCoy S, Weaver MR, Haagsma J, Kartin, D. Global prevalence of traumatic non-fatal major limb amputation. Prosthet Orthot Int. Submitted 2020 March.)に、スタンフォード大学のMaurice LeBlanc氏の2011年講義資料(https://web.stanford.edu/class/engr110/2011/lecture03a.html)の”義足=約70%”をかけた数字である4,550万人に、さらに、国連レポート(United Nations (http://www.who.int/en/news-room/fact-sheets/detail/assistive-technology ))の”現在(義足など)アシスティブ・デバイスにアクセスできるのは10人に1人”より、90%をかけた4095万人を、「脚の一部を無くしたにもかかわらず義足を購入できない方」とした。
株式会社インスタリムについて
概要 3Dプリント義肢装具および製造装置の開発・製造・販売
本社所在地 東京都墨田区横川1-16-3
代表者 代表取締役CEO 徳島 泰
URL https://www.instalimb.com/
【お問い合わせ】
東京大学協創プラットフォーム開発株式会社
東京都文京区本郷7-3-1 東京大学南研究棟アントレプレナーラボ261
TEL: 03-3830-0200 / FAX: 03-3830-0183
Email: info2@utokyo-ipc.co.jp
担当: 川島奈子