SaaSとは?メリット、代表例、PaaSやIaaSとの違いを解説
【目次】
SaaSとは?
SaaSとは「Software as a Service」の略称であり、「サービスとしてのソフトウェア」を意味する言葉です。日本語での読み方は、「サース」もしくは「サーズ」です。
より詳しく説明すると、SaaSとは、ベンダーが提供するクラウドサーバー(クラウド上に存在する仮想サーバー)にあるソフトウェアを、インターネットを経由してユーザーが利用できるようにするサービスのことです。
ここでいうソフトウェアとは、特定の目的を達成するためのアプリケーションのことであり、会計ソフト・メールアプリ・ビデオ会議ソフトなどさまざまな種類が存在します(詳しくは後の章『SaaSの代表例』にて紹介します)。
SaaSの場合、ソフトウェアはユーザーアカウントごとに提供されるため、ユーザーはオフィスだけでなく自宅・外出先などからもソフトウェアにアクセスし、サービスを利用できます。また、デバイスが違っていてもアカウントが同一であれば同じサービスを利用できるため、ユーザー側におけるリモートワークの促進につながっています。
さらに、ドキュメント編集機能やストレージ機能などが備わっているSaaSであれば、複数のチーム・ユーザー間で同時にデータの管理・編集を行えます。このように、複数人で1つのファイルを共有しつつ同時に管理・編集できる点は、従来のパッケージ型ソフトウェアには見られなかった大きな特徴といえます。
SaaSのメリット・デメリット
ここからは、SaaSを導入した場合に生じる可能性のある主なメリット・デメリットを順番に取り上げます。
メリット
まずは、SaaSを導入するにあたって期待されるメリットの中から、代表的な5つをピックアップし、順番に解説します。
ソフトウェアの開発が不要
SaaSでは、他社(ベンダー)が作ったクラウドサーバーのソフトウェアを利用します。そのため、ソフトウェアの開発が不要であり、開発コストを抑制することが可能です。
また、従業員の増減が多い企業であっても、アカウントの増減のみで容易かつ柔軟に対応できます。このことから、買い切りとして購入するパッケージ型のソフトウェアと比べて、無駄なコストを支払わずに済みます。
導入コストが低い
前述のとおり、SaaSではソフトウェアの開発が不要であり、契約した直後からサービスを利用できるケースが一般的であるため、サービスの導入コストが低い点も魅力的なメリットです。
また、料金プランによっては、ベンダーによる手厚いフォローが受けられることもあります。これに対して、自社で自社向けのソフトウェア開発を行う場合、導入するために開発コスト以外に資料作成、説明要員の社内手配など社内共有するだけでも非常に多くのコストがかかります。
以上のことから、コストが限られている企業からすると、SaaSの利用によってコスト負担を抑えながらスムーズな事業運営を目指すことが可能です。
スモールスタートができる
SaaSの導入にあたっては、スモールスタート(最初は機能・サービスを限定して小規模に導入し、需要の増大に応じて順次規模を拡大させていくこと)を行えます。
これにより、初期投資を抑えられることから、新たな事業を開始する際のリスク要因にもなりません。また、失敗したら最小限の投資で撤退できる点も魅力的です。
なお、スモールスタートできることは、SaaSをはじめとするクラウドサービス全体に共通するメリットだとされています。
ソフトウェアの管理はベンダー
SaaSの場合、ユーザーに求められるのは利用者・利用ルール・コスト・利用するデータの管理のみとされることが一般的であり、その他の管理はベンダーに任せられます。そのため、ソフトウェアに関する専門知識のあるエンジニアが不足している企業でも導入しやすいです。
メンテナンスコストが抑えられる
前述のとおり、SaaSではベンダーがソフトウェアを管理する役割を担い、この一環として逐次アップデートの作業を行ってくれるため、いつでも最新状態の機能を利用できます。
このように、ユーザー側にはソフトウェアの管理に手間がかからず、そのためのメンテナンスコストを抑えられる点も見逃せないメリットです。
デメリット
続いて、SaaSの導入にあたって発生するおそれのあるデメリットの中から、代表的な2つをピックアップし、順番に解説します。
大幅なカスタマイズは困難
SaaSの大きなデメリットとして、ソフトウェアの機能が限られる点が挙げられます。基本的にSaaSのカスタマイズ自由度は低く、ベンダーの提供している以上のサービスは利用できません。そのため、自社の業務に適したSaaSが見つからない場合、提供されるサービス内容に合わせて運用・業務形態などを変更する必要性が生じます。
データ移行が難しい
SaaSには、データを移行するのが難しいというデメリットもあります。利用するSaaSを変更する場合、ユーザーはこれまで利用していたSaaSから新たなSaaSにデータを移行する必要があります。
しかし、SaaS間でのデータのやりとりは難しい(乗り換え、データ連携に多くの手間がかかる)ため、一度導入したSaaSは変更しにくい点に注意しましょう。
そのほか、当然ですが、SaaSはインターネットの障害時には利用できない点もデメリットの1つです。
SaaSの代表例
SaaSの代表例をそれぞれの概要と併せて以下にまとめました(順不同)。
- Slack(アメリカ発の、特にエンジニアに人気のあるチャットツール)
- Chatwork(日本製のチャットツール)
- LINE WORKS(「LINE」をもとに開発されたチャットツール)
- Zoom(ビデオ会議、オンライン会議、チャット、モバイルコーポレーションが組み合わさったWeb上のコミュニケーションソフトウェア)
- Google Meet(Google社の提供するビデオ会議ツール)
- Microsoft Teams(Microsoft社の運営するコミュニケーションツール)
- Salesforce(顧客関係管理ソリューションを中心としたクラウドコンピューティングサービス)
- kinton(サイボウズ社の提供する業務改善プラットフォーム)
- Sansan(顧客管理や営業リスト作成・顧客へのアプローチなど営業効率化に向けた支援ツール)
- freee(無料で利用できる日本最大手のクラウド会計ソフト)
- マネーフォワード クラウド(マネーフォワード社が運営する会計ソフト)
- SmartHR(人事・労務の業務を効率化するためのクラウドサービス)
- HRMOS(ビズリーチ社の運営する採用管理クラウドシステム)
- ServiceNow(複数システムのデータを集約し、統合的な運用管理の実現するITサービスマネジメントツール)
- Canva(オンライングラフィックデザインツール)
SaaSとPaaS、IaaSの違い
SaaSと類似する言葉に「PaaS」および「IaaS」が挙げられますが、これらはそれぞれ特徴の大きく異なるサービスです。下表に、それぞれのサービスの主な相違点をまとめました。
SaaS | PaaS | IaaS | |
提供サービス | ソフトウェア | プラットフォーム(例:ミドルウェア、OS) | ITインフラ(例:システム構築に必要なサーバー、ネットワーク) |
主なユーザー | 全従業員 | アプリ開発者 | システム構築技術者 |
利用の難易度 | 低 | 中~高 | 中~高 |
利用コスト | 低 | 中 | 中~高 |
ここからは、SaaSとPaaSおよびIaaSの相違点を詳しく順番に解説します。
PaaSとの違い
PaaS(正式名称:Platform as a Service)とは、アプリケーションの実行に必要なプラットフォーム(例:ネットワーク、サーバーシステム、OS、ミドルウェアなど)を、インターネットを経由して利用できるようにするサービスのことです。
ユーザー側の企業からすると、OSやミドルウェアなどを提供してもらうことで、開発環境を構築する際にかかる手間を軽減でき、システム開発をスムーズに進めやすくなります。
SaaSでは実際に利用できるソフトウェアを提供するのに対して、PaaSではプラットフォーム(例:OS、ミドルウェアなど)までの提供にとどまる点に大きな違いが見られます。
また、PaaSでは、プラットフォーム上で動作するシステムの設定や内部に保存するデータの管理などはすべてユーザー側の責任となります。そのため、適切に設定できていない場合は、情報漏えいが起こるリスクがあります。そのほか、使い方(例:24時間サーバーを稼働させる場合)によっては、必ずしもコストを抑えられるとは限らない点も要注意です。
PaaSについてさらに詳しく知りたい場合は、以下の記事をご確認ください。
IaaSとの違い
IaaS(正式名称:Infrastructure as a Service)とは、情報システムの稼動に必要なインフラとなるネットワークやサーバーシステムなどを、インターネットを経由して利用できるようにするサービスのことです。
IaaSには利用したいハードウェアのスペックやOSをユーザーが自由に選択して構成できる点に大きな特徴があり、SaaSやPaaSなどよりも自由度の高いサービス形態だといえます。
ただし、IaaSでは、インフラの保守や運用以外はすべてユーザー側の責任となり、ユーザー側でトラブルなく効率的にインフラを稼動させる必要があります。そのため、ユーザー側に高い知識と技術を持った技術者の確保が求められ、管理コストが大きくなりやすいです。
IaaSの詳細は、以下の記事で解説しています。
まとめ
SaaSとは、ベンダーが提供するクラウドサーバーにあるソフトウェアを、インターネットを経由してユーザーが利用できるようにするサービスのことです。
SaaSを導入することで、ソフトウェアの開発が不要となる、導入コストを安く済ませられる、スモールスタートが行える、ベンダーにソフトウェア管理を任せられる、メンテナンスコストを抑えられるなどのメリットが期待できます。
SaaS、PaaS、IaaSの違いをまとめると、ユーザーに提供されるサービスの構成要素の段階によって以下のとおり区別できます。
- SaaS(PaaSにアプリケーションを含め、ソフトウェアとしてまとめて提供する)
- PaaS(IaaSに加えて、OSやミドルウェアまでを提供する)
- IaaS(システムの構築に必要なサーバー、ネットワークを提供する)