LTV(ライフタイムバリュー)とは?計算方法と向上方法を解説

LTVとは?

ltv

LTVとは「Life Time Value/ライフ タイム バリュー」の頭文字を取ったマーケティング用語であり、日本語に直訳すると「顧客生涯価値」を意味します。より詳しく説明すると、​​1人あるいは1社の顧客が、特定の企業と取引を開始してから終了するまでの期間(顧客ライフサイクル)内にどれほどの利益をもたらすのかを算出したものです。

LTVは、顧客満足度や顧客ロイヤルティの向上などを通じて売上の拡大・収益性の向上を目指す経営戦略である「CRM(Customer Relationship Management/カスタマーリレーションシップマネージメント)」との親和性が高い指標であると考えられています。一般的に、ロイヤルティの高い顧客ほどライフサイクル内にもたらす利益が多く、LTVが大きくなる傾向が見られます。

マーケティングにおいてLTVが重要視されている主な要因には、新規顧客の獲得が難しいために既存顧客の維持に注目が集まっていることが挙げられます。

昨今、「1:5の法則」として知られるように、新規顧客獲得のコストは既存顧客維持のコストと比べて5倍ほど大きいと考えられており、既存顧客の維持・拡大がマーケティングにおける重要なテーマとして位置付けられています。

以上の点を踏まえて、顧客ごとに時間と利益の観点で数値を定量化できるLTVは、既存顧客の維持・拡大に関する判断指標として重用されています。

ちなみに、LTVと併せて把握しておきたい重要な指標に、ユニットエコノミクス(1顧客あたりの採算性)があります。これは主にサブスクリプション型ビジネスで多く用いられており、事業の経済性を示す管理会計の指標の1つです。ユニットエコノミクスについて詳しく知りたい場合は、以下の記事をご確認ください。

ユニットエコノミクスとは?計算式、目安、SaaSでの重要性を解説

LTVの計算方法

LTVを算出するための方法はさまざまですが、最もシンプルな計算式は以下のとおりです。

  • LTV=平均顧客単価×粗利率×購入頻度(回/年)×継続期間(年)

具体例を挙げると、とある企業A社が月額10万円(粗利率40%)のWebサイト運用サービスを10年間にわたって利用した場合、A社のLTVは以下のとおり算出されます。

  • 10万円×0.4×12×10=480万円

ただし、上記の計算式では顧客獲得や維持に必要なコストが考慮されていないため、実際にはこれらの要素を考慮した以下の計算式が用いられることが多いです。

  • LTV=平均顧客単価×粗利率×購入頻度×継続期間−(新規顧客獲得コスト+既存顧客維持コスト)

例えば、平均顧客単価・収益率・購入頻度・継続期間が前述したケースと同じであり、「新規顧客獲得コストとして広告費が100万円、既存顧客維持コストとして問い合わせへの対応や定期的なフォローのための人件費が150万円かかった」という場合、A社のLTVは以下のとおり算出されます。

  • 480万円-(100万円+150万円)=230万円

LTVを向上させる方法

LTVを向上させる方法

前述したLTVの計算式には、平均顧客単価・収益率・購入頻度・継続期間・新規顧客獲得コスト・既存顧客維持コストといった6つの要素が盛り込まれています。そのため、LTVを向上させるためには、それぞれの要素を増加させる(コストに関しては減少させる)ことが大切です。

上記の点を踏まえて、本章ではLTVの向上を目指すうえで留意しておくべき方法の中から、代表的な5つをピックアップし、順番に解説します。

平均顧客単価を上げる

LTVを向上させるうえで、平均顧客単価を上げることは有効策の1つです。これを実現するために効果的だと考えられている具体策の一例は、以下のとおりです。

  • 製品・サービスの購入単価を上げる
  • アップセルやクロスセルのアプローチを行う
  • 複数の価格バリュエーションを用意する

それぞれの施策を順番に詳しく解説します。

製品・サービスの購入単価を上げる

これは平均顧客単価の上昇を図る方法の中でも非常にシンプルであり、実施しやすい施策です。その反面、製品・サービスの購入単価を上げれば、顧客離れを起こすリスクがあります。このリスクを回避するためには、顧客に対して値上げの理由を明確に説明し、納得してもらうことが大切です。

特に、自社の製品やサービスにおける大きな強みが価格の安さである場合、値上げは顧客離れへの影響が大きくなる可能性が非常に高い点にも注意しましょう。

アップセルやクロスセルのアプローチを行う

アップセルとは、自社の製品・サービスを検討している顧客や以前に自社製品を購入した顧客などに、より高額な上位モデルに乗り換えてもらうことです。これに対して、クロスセルとは、自社商品の購入を検討している顧客に、別の製品・サービスをセットもしくは単体で購入してもらうことをさします。

アップセルやクロスセルのアプローチを図るための主な手法としては、レコメンド機能の活用が挙げられます。例えば、運用するECサイトにレコメンド機能を搭載することで、顧客に商品検索の利便性をもたらしつつ、顧客単価の向上を図ることが可能です。

複数の価格バリュエーションを用意する

平均顧客単価の向上を図るうえで、価格の異なる複数の商品バリエーションを用意することも有効策の1つだと考えられています。これにより、顧客が商品を選びやすくなるだけでなく、より価格の高い商品を選んでもらえる可能性もあります。このことから、前述したアップセルやクロスセルのアプローチと併せて行うことも望ましいです。

「松竹梅の法則」として知られるように、「高級品(松)」「中級品(竹)」「普及品(梅)」という3種類の商品バリュエーションを設けると、中級品が購入されやすくなると考えられています。

顧客に購入してほしい商品を中級品に据えつつ、高級品と普及品を商品バリュエーションに加えることで、「商品価格は安価であることに越したことはないものの、品質は落としたくない」という顧客心理が働いて、中級品を選んでもらえる可能性が高まります。

粗利率を上げる

LTVの向上を目指すうえで、粗利率を上げることも効果的です。これを実現するためには、前述した「商品・サービスの購入単価を上げる」ことと併せて、「原価・仕入れ価格を下げる」ことも大切です。

当然ながら、原価や仕入れ価格を下げたことで商品・サービスの品質が落ちれば、顧客体験が悪いものとなる可能性があり、顧客に不満を与えるおそれがあります。そうなってしまうと、顧客の流出や購入頻度の低下などにつながりかねません。これを防ぐためには、変更しても商品・サービスの質が落ちないか綿密な品質確認と準備を行う必要があります。

購買頻度を増やす

購買(購入)頻度を増やすことも、LTVの向上につながります。購入頻度の増加が見込まれる施策の一例としては、メールマガジンで自社の製品・サービスを顧客に対してリマインドすることが挙げられます。つまり、顧客が製品・サービスを必要とするタイミングでメールを配信し、自社商品を購入候補に入れてもらうのです。

たとえ顧客に自社商品を購入してもらえたとしても、その後も継続的に購入してもらえるとは限りません。顧客は買い替えを検討したり、他社商品との比較を行ったりするため、自社商品の強みや利用するメリットなどをわかりやすく伝えることが大切です。

継続期間を長くする

サービスの利用継続期間を長くする、つまり解約率を下げれば、それだけLTVを向上させられます。これを実現するためには、一度製品・サービスを売って満足するのではなく、購入してくれた顧客を優良顧客(会社の売上に大きく貢献してくれる顧客)に育て上げることを意識すると良いでしょう。

自社製品に対する顧客の気持ちをつなぎ止めておくうえで効果的な施策の一例は、以下のとおりです。

  • メールマガジンの配信
  • 既存顧客の悩みに応じた継続的な新規商品開発
  • カスタマーサクセス部門の設置
  • 長期利用者を優遇するポイントプログラムの導入

継続期間を長期化させたい場合、自社商品の売り込みに偏ったメールマガジンを配信しないよう注意しましょう。例えば、商品の使用方法や業界動向など、顧客にとって有用な情報も盛り込んで、興味を持ってもらえる工夫を講じることが大切です。

新規顧客獲得コストと既存顧客維持コストを下げる

新規顧客獲得コストや既存顧客維持コストの抑制も、LTVの向上を図るうえで効果的です。

具体例を挙げると、SFA(Sales Force Automation/セールス・フォース・オートメーション)やCRMシステムなどのツールを導入することで、日報作成やデータ分析といったさまざまな業務を効率化でき、新規顧客獲得コストや既存顧客維持コストの削減を目指せます。

まとめ

LTVとは「顧客生涯価値」のことで、​​1人あるいは1社の顧客が、特定の企業と取引を開始してから終了するまでの期間内にどれほどの利益をもたらすのかを算出した指標です。

LTVの計算方法はさまざまありますが、広く用いられている計算式は以下のとおりです。

  • LTV=平均顧客単価×粗利率×購入頻度×継続期間−(新規顧客獲得コスト+既存顧客維持コスト)

昨今は市場の成熟化が進み新規顧客の獲得が困難となっており、マーケティングにおいてLTVが重要視されています。以下のような施策を講じつつ、LTVの向上を目指しましょう。

  • 平均顧客単価を上げる
  • 粗利率を上げる
  • 購買頻度を増やす
  • 継続期間を長くする
  • 新規顧客獲得コスト、既存顧客維持コストを下げる
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