会社設立の流れを7つのステップに分けて徹底解説!【株式会社編】

会社設立の流れ

会社設立の流れ

本記事では、現金出資による発起設立(株式のすべてを発起人が現金で引き受ける)のケースを想定し、株式会社の設立における手続きの流れを紹介します。

一般的に、現金出資による発起設立における株式会社の設立の流れは、以下7つのステップで進められます。

  1. 発起人を決める
  2. 会社概要を決める
  3. 会社印を作成する
  4. 定款を作成する
  5. 定款の認証を受ける
  6. 資本金(出資金)を払い込む
  7. 登記申請

以降の章では、これらステップを1つずつ順番に解説していきます。

なお、会社設立のメリット・デメリットや、手続きを行う前に検討しておくべき事項などについて詳しく知りたい場合は、以下の記事をご確認ください。

会社設立する前に検討すべきこと、メリット・デメリットを解説

会社設立の流れ①発起人を決める

まずは、発起人を決定します。発起人とは、会社設立にあたって、資本金の出資・定款の作成など会社設立の手続きを行う人のことです。会社設立の後は、出資した資本金の金額に応じて株式が発行されることで、その会社の株主となります。

発起人が担う具体的な役割の一例は、以下のとおりです。

  • 会社に出資する(1株以上の出資をする)
  • 会社の重要事項を決める
  • 定款の作成・認証その他、会社設立に関する手続きを行う

発起人は上記のような役割を担うことから、基本的には会社設立までの行為に関して責任が規定されています。具体的には以下のとおりです。

会社設立ができなかった場合、その後始末について責任を負う
会社設立の手続きについて、自身の役割を怠り会社に損害を与えた場合、その損害を賠償する責任を負う

仮装の払い込み(実質的には払い込みといえず、外観上の払い込みを作り出す行為)が行われた場合や、現物出資(金銭以外の財産を出資に充てること)の財産が定款に記載された価額に著しく不足する場合、その不足分を支払う

なお、発起人の人数は、1名以上であれば人数制限は定められていません。また、発起人の資格について制限はなく、未成年や法人であっても発起人になれます。

発起人について理解を深めたい場合は、以下の記事をご参考ください。

発起人とは?会社設立における役割や責任、要件、注意点を解説

会社設立の流れ②会社概要を決める

会社設立に際して、会社概要を決定する必要があります。主に決定が必要な内容として、8つの項目を取り上げます。

社名

社名は商号とも呼ばれており(商号は法律上の言葉で法人登記の際に使用します)、会社の顔となる重要な事項です。「設立する会社の手掛ける事業内容をイメージしやすい」「会社の雰囲気が伝わりやすい」「代表者の理念を込めている」など、社名の決め方はさまざまあります。

個人事業主から会社設立により法人化する場合、屋号を引き継ぐことも可能です。

ただし、金融機関・学校など特定の団体を連想させる名称や、有名企業の名前を連想させる名称を採用すると、不正競争防止法により損害賠償を求められるおそれがあるため注意しましょう。

社名を決める際は、すでに類似する社名が存在していないかチェックしておくことが望ましいです。類似する商号は、法務省のWebサービスで検索するほか、本店所在地を管轄する法務局に出向いて専用端末を利用することでも調べられます。

なお、社名の前後には、必ず「株式会社」という法人格を入れなければなりません。

商号の詳細は、以下の記事で解説しています。

商号とは?決める時のルール、決め方をアドバイス

参考:法務省「オンライン登記情報検索サービスを利用した商号調査について」

事業目的

事業目的は、設立する会社がどのような事業を手掛けるのかを明示する事項です。会社の定款(詳細はステップ4で解説)において、事業目的は取引先・金融機関などが会社をチェックする際の判断材料になる項目であるため、明瞭かつ過不足のないように決めましょう。

なお、後から事業目的を変更する場合、定款と登記(詳細はステップ7で解説)の変更手続きが求められます。事業目的の変更手続きの登記申請では、登録免許税として3万円の費用が発生するため注意しましょう。

会社設立に際して、将来的に行う可能性のある事業を盛り込むことは禁止されていないものの、あまりにも一貫性のない目的が並ぶと、取引先や金融機関などから不自然に受け取られるおそれがあるため注意が必要です。

参考:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」令和4年4月1日現在法令等

所在地

所在地は、事業所の住所をさします。法律上の住所であるため、実際の事業活動地と異なっていても問題ありません。自宅やレンタルオフィス、バーチャルオフィスの住所を所在地とすることも可能です。

ただし、将来的に所在地として定めていた事業所を移転する場合、登記の変更手続きおよび登録免許税が求められるため、長期的に業務を行う場所を所在地に定めておくことが望ましいです。

なお、同一住所に同一の商号がある場合、登記を行えません。特にレンタルオフィスやバーチャルオフィスを所在地に決める場合、類似商号への注意が必要です。

資本金の額

資本金とは、会社設立時の元手のことであり、事業を行うための運営資金です。

2006年5月に施行された新会社法により、資本金の最低額は1円となり、1円でも法人の設立が可能です。ただし、信用度の観点から、一定以上の金額を準備しておくべきであると考える意見もあります。主に問題になりやすいのは、資金調達時の信用力です。

例えば、金融機関の融資制度を利用する際、資本金がチェックされます。特に会社設立直後は決算書がないため、会社の運営資金のベースとなる資本金は信用度に直結する要素です。資本金が極端に少ない場合、会社の資本体力がないとみなされて、融資が受けにくくなるおそれがあるため、適正な金額を設定しましょう。

資本金として準備する金額の1つの目安は、「会社の設立から3カ月間は利益を生み出せなかったとしても事業を継続できる金額」と言われています。これを踏まえて、会社設立時における資本金の平均額は300万円程度と一般的に考えられています。

総務省・経済産業省の調査を見ても、全国の企業のうち資本金が300万円〜500万円未満の割合は約34.7%と、最も多くの割合を占めていることがわかります。

資本金について詳しく知りたい場合は、以下の記事をご確認ください。

資本金とは?会社設立時の必要額、目安、決める時のポイントと注意点

参考:政府統計の総合窓口(e-Stat)「平成28年経済センサス‐活動調査」

1株あたりの金額(株価)

資本金の額と関連して、1株あたりの金額(株価)も検討しておくことが大切です。とはいえ、株価については、法律に特別な規定はありません。従来は旧商法によって額面株式1株の金額が5万円と定められており、現在でもこの規定にならっている会社も見られますが、基本的には発起人が自由に決めることが可能です。

ただし、株価を決める際は、会社設立後の株式発行について念頭に置いておきましょう。なぜなら、会社設立後に、既存の株主が不利益を被るおそれがあるためです。

具体例を挙げると、発起人Aが1株あたりの金額を15万円と設定し、300万円を出資して会社を設立した場合、Aは20株を取得します。

そして、会社設立後に増資のために株式を新たに発行する際、1株15万円では高すぎると判断して1株7万5,000円で出資者を募集し、Bが150万円で20株を取得する場合、BはAの半額の出資で同じ数の株式を所有できてしまいます。

これではAが不利益を被ってしまうため、会社設立後の株式発行も考慮したうえで株価を決定することが大切です。

増資について詳しく知りたい場合は、以下の記事をご確認ください。

資本金の増資とは?理由や方法、メリット/デメリットを解説

設立日

設立日は、法務局に会社設立の登記申請を行った日です。登記申請書類を郵送する場合、書類が法務局に到着し申請が受理された日が設立日となります。そのため、特定の日付を選びたい場合は、日にちを逆算し準備しておきましょう。

ただし、特定の日付に調整しようとしても、法務局の業務外の日や書類に不備がある場合は、指定した設立日にならないこともあります。

株主の構成(持株比率)

株主の構成は、持株比率とも呼ばれており、「株式会社において誰がどれだけ株式を持っているか」を示す事項です。

株主とは、設立した会社に出資を行い、その会社の株式を受け取る人のことで、会社設立前には発起人と呼ばれています。発起人は会社設立時に取締役を選任しますが、その際に自分を選任することも可能です。

役員の構成

役員とは、会社の業務執行・監督を担う幹部職員のことで、いわゆる経営者・上位管理職をさします。取締役、会計参与、監査役などがこれに該当します。

最低限、取締役を1人決めておけば会社設立は行えるため、1人で起業する場合は自身を取締役にします。ただし、取締役会を設置する場合や、事業規模が資本金5億円以上もしくは負債総額200億円以上に及ぶ場合などには、監査役の設置が必須です。

会計年度(事業年度)

法律によって、会社は一定期間の収支を整理し、決算書を作成することが義務付けられています。会計年度は、この決算書を作成するために区切る年度のことです。

会計年度を定める際は、決算月を決める必要があります。会計年度が1年を超えなければ、決算月は自由に選べます。決算月には収支の計算や棚卸などの作業が発生するため、会社の繁忙期を避けて設定するのが一般的です。

会社設立の流れ③会社印を作成する

会社印を作成する

登記申請を行う際は、会社の印鑑を届け出ます。会社設立のために使用するのは代表印(会社実印)のみですが、 会社の運営上頻繁に使われる銀行印や角印、ゴム印なども併せて作成しておくと良いでしょう。

数種類の印鑑を作る理由は、リスクを分散するためです。例えば、法務局に届出を行う「代表印」であらゆる書類に押印してしまうと、 紛失時のリスクや印鑑盗用のリスクが高まってしまいます。そこで、代表印は重要な書類にのみ使用し、 書類に応じて銀行印や角印を使い分ける慣習があるのです。

印鑑の発注から完成までには、目安として3営業日ほどの日数がかかります。そのため、会社概要が決まった段階で会社印を注文しておくと、その後の会社設立の手続きをスムーズに進められます。

会社印の詳細は、以下の記事で解説しています。

会社印とは?種類や印鑑登録の方法、使い方をわかりやすく解説

会社設立の流れ④定款を作成する

定款は会社の憲法と呼べるものであり、会社の根本となる重要な規則です。定款の作成は、会社設立の流れの中でも最も時間がかかりやすいため、余裕を持って準備を進めることが望ましいです。

定款には、ステップ2で決めた会社概要の内容を記載しますが、その中でも必ず記載しなければならないと法律で定められている「絶対的記載事項」があります。絶対的記載事項は、以下の5項目で、記載がないと定款自体が無効になってしまうため注意しましょう。

  • 発起人の氏名および住所
  • 社名
  • 事業目的
  • 所在地
  • 設立に際して出資される財産の価額またはその最低額

なお、定款には決まった書式やフォーマットはありませんが、提出方法には紙と電子定款の2種類があります。

紙の場合は、PCで作成し、印刷・製本するのが一般的です。これに対して、電子定款では、PDF化したデータを電子認証することで手続きを行います。電子定款であれば、紙の定款で必要になる収入印紙代(4万円)がかからないため、最近は電子定款を選ぶケースが増加中です。

ただし、電子定款の作成には、電子署名のためのソフト・機器などが必要です。

定款について理解を深めたい場合は、以下の記事で解説しています。お読みいただくことで、会社設立の流れをスムーズに進めることにつながりますので、ぜひご確認ください。

定款とは?会社設立時に必須となる書類の記載事項、認証方法を解説

会社設立の流れ⑤定款の認証を受ける

定款の認証を受ける

続いて、公証人から定款の記載内容に法令上の問題がないかチェックを受け、定款に間違いがないことを証明してもらいます。公証人とは、法務大臣に任命された法律事務の専門家のことです。

定款の認証は、北海道を除いて、本店の所在地を置く都府県にある公証役場であれば、どこでも手続きできます。北海道では、本店所在地を管轄する地域の法務局もしくは地方法務局の管内にある公証役場で手続きを行えます。

定款の認証には、発起人の印鑑証明書と認証手数料として5万円の費用が求められます。そのほか、紙の定款では収入印紙代(4万円)もかかります。

参考:日本公証人連合会「7-4定款認証」

会社設立の流れ⑥資本金(出資金)を払い込む

定款の認証を受けたら、発起人は引き受けた株数に相当する金額を資本金(出資金)として金融機関に払い込みます。この時点では会社設立登記が完了しておらず、会社の銀行口座を作れないため、資本金の振込先は発起人の個人口座です。

発起人自身の口座に預金残高がすでにある場合、出資金分の金額を一度引き出したうえで、入金し直しましょう。

次のステップである登記申請では、資本金の振り込みを証明する書類が必要になります。そのため、この払い込まれた口座のコピーを取ります。具体的には、通帳の表紙、表紙裏(支店名、口座番号、口座名義人が記載されたページ)、振込記録のあるページをコピーしましょう。

その後、これらのコピーと併せて「払い込みを証する書面」を作成します。

会社設立の流れ⑦登記申請

会社設立の登記申請は、設立する会社の所在地を管轄する法務局で行います。原則として、資本金の払い込み後、2週間以内の申請が必要です。

設立登記の申請時に必要な書類の一例は、以下のとおりです。

  • 設立登記申請書
  • 登録免許税分の収入印紙
  • 定款
  • 発起人の同意書(発起人決定書、発起人会議事録)
  • 設立時代表取締役の就任承諾書
  • 監査役の就任承諾書
  • 発起人の印鑑証明書
  • 資本金の払い込みを証明する書面
  • 印鑑届書
  • 登記用紙と同一の用紙

必要書類は定款の記載内容により異なるため、詳しくは法務局の登記相談窓口や司法書士、税理士などの専門家にご相談ください。なお、設立登記を行う際は、登録免許税(資本金の1000分の7の額。この金額が15万円に満たない場合は15万円)の支払いが必要です。

登記申請は原則として代表者が行いますが、代理人によって行うことも認められています。代理人が行う場合、上記の書類に加えて委任状が必要です。登記申請後、不備がなければ1週間~10日程度で登記が完了し、会社設立までの手続きが完了します。

会社設立の際に求められる登記の詳細は、以下の記事でご確認ください。

法人登記とは?流れ、必要な書類、費用をわかりやすく解説

参考:法務局「管轄のご案内」
法務局「商業・法人登記申請手続 株式会社」
法務局「商業・法人登記 Q&A」
国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」令和4年4月1日現在法令等

ステップ①〜⑦までに必要な費用

ステップ①〜⑦までに必要な費用

最後に、ここまで紹介した株式会社の設立の流れを進めるにあたって、必要な費用の代表例をまとめました。

  • 定款の認証にかかる手数料:5万円(そのほか、謄本代で2,000円程度が必要)
  • 定款の収入印紙代:4万円(電子定款を採用する場合は不要)
  • 登録免許税:15万円〜
  • 会社印の作成費用:セットで5,000円〜20万円(素材により異なる)

このことから、株式会社の設立までには、最低でも20万円程度の費用がかかります。なお、会社設立の手続きを専門家に依頼した場合、上記に手数料が加算されます。

まとめ

株式会社の設立の流れは、以下7つのステップで進めていくのが一般的です。

  1. 発起人を決める
  2. 会社概要を決める
  3. 会社印を作成する
  4. 定款を作成する
  5. 定款の認証を受ける
  6. 資本金(出資金)を払い込む
  7. 登記申請

株式会社の設立には、多くの手続きが求められます。あらかじめ会社設立の流れ、方法などをチェックし計画的に行わなければ、会社設立自体が遅れてしまい、場合によっては計画どおりに事業活動を進められなくなるおそれがあります。

会社設立の流れに関して不安があれば、司法書士や税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

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