エンジェル投資家とは?投資を受ける方法となる方法
【目次】
エンジェル投資家とは
エンジェル投資家とは、創業から間もない企業(例:アイデアのみがある段階の企業、事業モデルがまだ固まっていない企業、PSF達成前の企業など)に対して、個人の責任で資金を提供する個人投資家を指すのが一般的です。「困っている者を救う天使」のようなイメージから、その名が付けられました。なお、特にヨーロッパでは、「ビジネスエンジェル」とも呼ばれています。
エンジェル投資家の主な目的は、出資の形で資金を提供する見返りとして投資先企業の株式を取得しておき、その企業が上場(IPO)やM&Aなどによりイグジットを行った際に、株式の売買差益(キャピタルゲイン)を獲得することにあります。
エンジェル投資家が行うエンジェル投資の特徴
一般的な個人投資家は、証券会社を通じて上場企業に投資を行います。そして、投資先企業の安定的な成長を期待し、その企業の株式を保有することで、継続的な利益(配当金:インカムゲイン)の獲得を図る場合が多いです。
これに対して、エンジェル投資家は、直接投資・ベンチャーキャピタル・投資家マッチングサービス・株式投資型クラウドファンディングなどを通じて未上場企業に投資を行います。そして、投資先企業がイグジットを行うタイミングにおいてキャピタルゲインの獲得を図る場合が多く、インカムゲインについてはそれほど期待しない傾向が見られます。
また、エンジェル投資家は、ベンチャーキャピタルよりも前のタイミングで企業に投資を行うケースが多く見られます。中には、起業準備の段階(シードステージ)にありベンチャーキャピタルからの出資を受けることが難しい企業に対して、積極的に投資を行っているエンジェル投資家もいます。
エンジェル投資家が上記のような行動を取る主な理由は、以下のとおりです。
- 起業家やスタートアップを応援したい・社会貢献を行いたい
- 創業直後に比較的安い価格で株式を取得しておき、より多くの利益を獲得したい
- 注目を浴びたい・業界に名前を残したい
エンジェル投資家が主要な資金提供先として挙げられるシードステージについては、以下の記事で詳しく解説しています。
エンジェル投資家から投資を受ける方法
本章では、エンジェル投資家から投資を受ける際の一般的な方法を、3つのステップに分けて取り上げます。
資料の準備
エンジェル投資から投資を受けるには、まず自社の事業概要をまとめた資料を準備します。エンジェル投資家に対して十分に魅力を伝えられるよう、わかりやすい資料の作成を心がけましょう。エンジェル投資家が求める資料の代表例は、以下のとおりです(エンジェル投資家によって、企業に対して求める資料は異なっており、必ず下記のすべての提出が求められるわけではありません)。
- 会社謄本
- 決算書(直近2期分)
- 試算表(直近2カ月分)
- 販売管理費明細表
- 銀行残高と借入残高(直近)
- 株主名簿
- 定款
- 役員名簿と個々の役員の経歴
- 主要取引先リスト
- WebサイトのURL
- 会社案内のパンフレット
- 資本政策案
- 株価算定表
- 事業計画書
- 発行済株式の概要
エンジェル投資家と接触
次に、エンジェル投資家と接触して、前のステップで準備した資料を提出します(投資家と接触した後で、新たに資料の提出を求められるケースもあります)。接触するための具体的な手段としては、エンジェル投資家とマッチングできるイベント(例:セミナー、ビジネスコンテストなど)に参加する方法、人に紹介してもらう方法、SNSを活用して直接連絡する方法などが代表的です。
投資条件交渉
エンジェル投資家と接触し、個人対個人としての相性が良く信頼できる人物であると判断されて、起業のアイデアや事業に興味を持ってもらえたら、投資条件交渉に移ります。エンジェル投資家が投資先企業を選ぶポイントの1つに、「創業者の信頼性や人間性」が挙げられます。エンジェル投資家から信頼を得て、その後の投資につなげるためにも、条件交渉を焦ることなく、誠実なコミュニケーションを心がけると良いでしょう。
投資条件交渉では、エンジェル投資家によって、市場におけるポジションの優位性・イグジットの可能性など、さまざまな観点から企業の資質を見極められ、投資を行うかどうか判断が行われます。これらのプロセスが終了し、投資契約を締結すると、実際にエンジェル投資家から投資を受けられます。
なお、エンジェル投資家はキャピタルゲインの獲得を目的としているため、投資を受ける企業側からすると将来的にイグジットの実施を想定する必要があります。つまり、「イグジットを目指していない企業」や「株式会社以外の企業」については、たとえ事業の成長性・収益性が優れていたとしても、エンジェル投資家の投資対象とはならないと言えるでしょう。
以上、エンジェル投資家から投資を受ける方法を紹介しました。これとは反対に、エンジェル投資家を目指したいという人に向けて、次章ではエンジェル投資家になる方法を取り上げます。スタートアップやベンチャーの創業者の方にとっても、エンジェル投資家から投資を受ける手段を把握できるため、目を通しておくことをおすすめします。
エンジェル投資家になるには
エンジェル投資家になるには、投資を行わないことには始まりません。そこで、本章では、エンジェル投資家として投資を行う(エンジェル投資家になる)代表的な方法を4つ取り上げます。
- 株式投資型クラウドファンディングから投資
- 投資家マッチングサービスでマッチング
- ベンチャーキャピタルを通じて出資
- 紹介、SNSなど直接やりとりをして投資
なお、上記4つの方法は、比較的手軽に行えるものから順番に並べています。それぞれの概要を順番に紹介します。
株式投資型クラウドファンディングから投資
クラウドファンディングとは、インターネットを通じて、自身が活動を応援したいと思ったり、リターンに魅力を感じたりした個人・組織に対して資金を提供できる仕組みです。
さまざまな形態が存在しており、「寄付型」や「購入型」のクラウドファンディングでは資金提供の見返りにモノやサービスなどを受け取れるのに対して、「株式投資型」ではその企業の株式を取得できます。
1人の投資家が1つの企業に投資できる金額は年間50万円までに制限されており、企業側では複数の投資家から出資を募るのが一般的であることから、投資家1人あたりの必要投資額が比較的少なく、手軽に投資しやすい点にメリットがあります。
参考:日本証券業協会「制度概要」2022年2月1日時点
投資家マッチングサービスでマッチング
投資家マッチングサービスとは、インターネット上で、「投資により利益を獲得したい個人投資家」と「資金が必要な起業家」のマッチングを図れるサービスです。
起業家が自身の行いたい事業を明確に発信している案件も多く掲載されており、投資家としてサービスに登録することで興味のある企業や事業を自由に探せます。また、起業家と投資家がマッチングすれば、細かな条件確認を直接行える点もメリットです。なお、出資金額は、最低100万円が1つの目安とされています。
ベンチャーキャピタルを通じて出資
有望な未上場企業に特化して投資したいならば、ベンチャーキャピタルを通じて出資する方法も有効です。
ベンチャーキャピタルとは、高い成長率が期待される未上場企業に対して出資(資金提供の対価として、主に株式を取得)の形で投資を行う組織のことです。ベンチャーキャピタルでは、未上場企業に対して投資を行うための資金を集める際、ファンドを組成して投資家から資金を募ることがあります。この場合、将来的に成長した投資先企業がイグジットを行うことで生じるキャピタルゲインを投資家に分配するという仕組みでファンドを運営するケースが多いです。
エンジェル投資家の立場からすると、ベンチャーキャピタルが運営するファンドに出資することで、間接的に投資を行うことが可能です。投資先のデューデリジェンス(例:リスクの把握・分析など)はベンチャーキャピタルに実施してもらえるため、比較的リスクを抑えながらエンジェル投資を行えます。
ベンチャーキャピタルについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。
紹介、SNSなど直接やりとりをして投資
投資家として著名な存在であれば、自身からアプローチを行わなくとも、人からの紹介やSNSなどを通じて、多くの起業家から投資を求める相談が届きます。これを利用して投資を行う場合、起業家と比較的容易に直接やりとりできる点はメリットですが、前述した3つの方法とは異なり、投資して良いかどうかのフィルタリングがあまり掛かっておらず玉石混交であることから、投資先の見極めには注意が必要です。
まとめ
一般的に、エンジェル投資家とは、創業から間もない企業に対して、個人の責任で資金を提供する個人投資家を指します。資金を提供する見返りとして投資先企業の株式を取得しておき、その企業が上場(IPO)やM&Aなどによりイグジットを行った際に、株式の売買差益(キャピタルゲイン)を獲得することを主な目的に掲げています。
エンジェル投資家から投資を受けるには、大まかに分けて「資料の準備」「エンジェル投資家と接触」「投資条件交渉」という3つのステップを踏むことが大切です。
また、エンジェル投資家になるには、「株式投資型クラウドファンディング」「投資家マッチングサービス」「ベンチャーキャピタル」「紹介・SNS」などを活用するケースが多く見られます。これら4つはエンジェル投資家から投資を受けるための手段でもあるため、スタートアップやベンチャーの創業者の方も把握しておくと良いでしょう。