アクセラレーターとは?支援を行うアクセラレータープログラムも解説
【目次】
アクセラレーターとは?
アクセラレーター(英語:Accelerator)とは、英語で「加速させるもの」を意味する言葉です。ビジネスの分野では、シード期以降の未上場企業(例:スタートアップ・ベンチャー)や起業家、一般企業の新規事業部門などの成長を急速に促進するために、3カ月〜6カ月程度の期限を設けたプログラムを提供する団体・組織をさすのが一般的です。
アクセラレーターとインキュベーターの違い
アクセラレーターと類似する言葉に、インキュベーターが挙げられます。両者は「未上場企業や起業家に対して支援を提供する団体・組織」という点で共通していますが、厳密にいうと異なる概念です。両者の主な特徴を比較した相違点を、下表にまとめました。
アクセラレーター | インキュベーター | |
主な目的 | 既存事業の成長・拡大 | 起業や新たな事業の創出 |
主な対象 | シード期以降の未上場企業・一般企業における新規事業部門 | シード以前(特に創業直後)の未上場企業 |
支援期間 | 3カ月〜6カ月程度が多い | 数年間〜無期限が多い |
支援のプロセスや姿勢の傾向 | アクセラレーターが事業計画を公募し、選考を通過したものに対して支援を提供する。支援を受ける側の自由度が比較的高い。 | インキュベーターが信頼する企業から推薦を受けた事業計画や、公募により集まった事業計画を対象に、選考を通過したものに対して支援を提供する。支援を受ける側の自由度が比較的低い。 |
支援を受けるメリット | 事業拡大にかかる期間の短縮や、収益性の高い事業計画の実現を目指せる。 | 起業・事業の創出までに生じるトラブル・課題を解決しつつ、事業の成長や企業価値の向上などを目指せる。 |
そのほか、ベンチャーキャピタル(VC)も、「未上場企業の成長支援を行う」点においては類似する団体・組織です。しかし、アクセラレーターでは「既存事業の成長・拡大」を目的に掲げているのに対して、ベンチャーキャピタルでは「未上場企業に投資し、将来的に利益を得ること」を目的に掲げており、この点において相違が見られます。
ベンチャーキャピタルについては以下記事で詳しく解説しておりますので、興味がある方はご一読ください。
アクセラレーターが支援を行うアクセラレータープログラム
アクセラレーターは、「アクセラレータープログラム」の実施を通じて支援を提供しています。本章では、アクセラレータープログラムの基本知識について取り上げます。
アクセラレータープログラムとは
未上場企業や起業家、一般企業内の新規事業部門などに対して、アクセラレーターが支援を提供することで共創・協業を目指すためのプログラムのことです。アクセラレーターと支援対象の相互成長を目的に、当事者双方が利点を享受する事業モデルについて実証を行います。
一般的に、アクセラレータープログラムは、以下の流れで進められます。
- アクセラレーターが事業計画の公募・審査を行う
- 支援対象を決める
- メンター(相談者)が事業計画のブラッシュアップ、教育プログラム・ツール・リソースの提供、オープンイノベーション関連イベントへの参加などの支援を行い、事業計画を具体化させる
- 実証実験により事業モデルを検証する
- 最終プレゼンテーション「デモデイ(成果発表会)」で披露する
アクセラレータープログラムを受けるメリット
アクセラレーターの持つ資金・設備・市場のネットワーク・マーケティング力などのリソースを活用できます。
また、アクセラレーターとの協業を通じて、スタートアップやベンチャーでは社会的な信用度の向上も期待できます。これにより、事業の展開に際して、取引先・提携先などを得やすくなる点もメリットです。
さらには、他企業やベンチャーキャピタルに事業計画を発表するデモデイに参加することで、出資・事業提携の提案を受けるチャンスを獲得することも可能です。
スタートアップについて以下記事で解説しておりますので、アクセラレーターの理解を助けるためにもご一読いただけますと幸いです。
アクセラレータープログラムのタイプ
アクセラレータープログラムは、大まかに4つのタイプに分かれます。下表に、それぞれの概要をまとめました。
タイプの名称 | 特徴 |
自社実施型 | 大企業が、自社内のアクセラレーターを運営者としてプログラムを運営する。 |
伴走型 | プロジェクトの立ち上げから、提携先の募集、事業アイデアの検証や精査までの一連の流れを、支援対象に近い立場で寄り添いながら支援する。 アクセラレータープログラムへの参加経験がない場合でも、的確なサポートを得やすい。 |
Powered by型 | アクセラレーターと支援対象の間に専門の事業者が介入してプログラムの運営を手掛ける。 |
N:Nマッチング型 | 専門の事業者が主体となって、アクセラレーターと支援対象のマッチングをサポートする。 専門の事業者が、多様なニーズに応じながら事業プランの適合を行うことで、予想外のシナジー創出が期待できる。 |
大企業がアクセラレータープログラムを導入する理由
最近では、スタートアップやベンチャーなどの上場企業だけでなく、大企業においてもアクセラレータープログラムの導入を積極的に検討しています。この背景には、市場環境の急速な変化に伴い、大企業が提供すべき価値が激しく変化しているという事情が深く関係しています。
一般的に、大企業は経営リスクを恐れたり既存事業とのバランスを重視したりする傾向が強く、新規事業や技術などに対する挑戦の意欲が欠乏しやすいです。また、開発プロセスや意思決定などに多くの時間がかかりやすく、世の中の変化への対応が難しい傾向にあります。
その一方で、近年では、市場環境の変化が激しいため、現状維持の状態に危機感を覚えて、新規事業・技術の開発に意欲を示す大企業も多く存在します。
そこで、社外から新たなアイデアや技術を取り入れることで、イノベーションを加速させて新規事業の創出につなげられることから、大企業でもアクセラレータープログラムの導入を検討する動きが見られるのです。なお、近年では、大企業がアクセラレータープログラムでの失敗を防ぐために、「業界やテーマを限定してイノベーティブなスタートアップを受け身で待つ」方針ではなく、「社内発の課題を解決するスタートアップを積極的に探して支援する」方針を選択するケースが目立っています。
スタートアップのアクセラレーター「東京大学FoundX」について
東京大学FoundXは、スタートアップ向けの施設とプログラムを提供している「スタートアップのアクセラレーター」のような組織です。
FoundXのプログラムは、東京大学・東京大学大学院の卒業生・現役生・研究者を対象に、シード期以前のチームや個人を支援しているインセプションプログラムです。
FoundXの提供するインセプションプログラムには、従来型のインキュベータやアクセラレータとは異なり、「事業の孵化や加速化を促すだけでなく、人の起業家としての孵化や成長を支援し、起業家を生むためのプログラム」という意味合いが込められています。
具体的にいうと、アイデアがまだ定まっていない状態から、アイデアを固めて、チームを作り、最初の資金調達を行うまでのフェーズにあるチームや個人に対し、起業に役立つリソースや事業の成長と起業家としての成長を実現できる環境を無償で提供し、有利な資金調達を行えるようになるまでの道のりをサポートする、超初期に特化したプログラムです。
2022年3月現在、FoundXでは、以下のプログラムを運営しています。
- Fellows Program
- Founders Program
Fellows Programとは、アイデアの発見のサポートや、コワーキングスペースの無償提供などを行っているプログラムです。続いて、Founders Programとは、すでにアイデアを持っているチームに対して、次回の資金調達を行うまでの支援や、個室の無償提供などを行っているプログラムです。
Fellows Programの締切は毎月10日です。定期的に募集しておりますので、詳細はFoundXの公式Webサイトにてご確認ください。
出典:FoundX