早稲田WBS-東大IPC、アカデミア系ベンチャーとのミートアップイベント
「アカデミア系ベンチャーとのミートアップ」をテーマにしたイベントが、2022年6月26日(日)に早稲田大学 大学院 経営管理研究科(WBS) 杉田ゼミと東大IPCの共催で開催されました。
これは早稲田WBS生のための東大IPC投資先ベンチャー企業とのミートアップイベントで、早稲田大学 大学院 経営管理研究科 杉田 浩章教授が東大IPCのアドバイザーを務める関係性から実現しました。
本イベントには毎回、東大IPCが支援するディープテック系ベンチャーのCxOが参加します。注目スタートアップの経営者らによる「事業にかける想い」や「それを支える革新的ソリューション」に関するピッチセッションの後に、早稲田大学WBSのメンバーも交えたカジュアルな交流タイムが設けられています。
今回は、WBSの杉田教授および東大IPCの投資責任者である水本 尚宏と、東大IPCが支援するディープテック系ベンチャーである「株式会社トレードワルツ 取締役 CEO 室長 染谷 悟氏」「株式会社アーバンエックステクノロジーズ 代表取締役 前田 紘弥氏」「株式会社Yanekara 代表取締役 COO 吉岡 大地氏」にご登壇いただきました。こちらの記事では、特に盛り上がった内容の一部をハイライトでお伝えします。
【目次】
▼当日のタイムテーブル
本イベントは、以下の内容で進行しました。
- 14:00~ ガイダンス(主催者の挨拶)
- 14:05~ ベンチャーによる会社紹介ピッチ
- 14:50~ グループワークセッション
- 15:30~ 懇親会
- 16:30 閉会
東大IPCでは、次回以降も早稲田WBSとの共催で「アカデミア系ベンチャーとのミートアップ」をテーマに、テック系スタートアップ・ベンチャーによるピッチや、MBAスクール生を交えたディスカッションを体験できるイベントを開催しますので、ご興味がある方はぜひご参加ください。
▼登壇者プロフィール(順不同)
早稲田大学 大学院 経営管理研究科(WBS)杉田 浩章教授
2021年より東大IPCにシニアアドバイザーとして参加。投資先ベンチャーへのアドバイス、大企業との連携などについてアドバイスを行う。株式会社日本交通公社を経て、1994年にボストン コンサルティング グループへ入社。2001年にパートナーに昇進し、2006年から6年半日本オフィス統括責任者、2016年から4年間日本代表を務めたのち、現在に至る。その間、幅広い業種に対して、再成長に向けた抜本的な企業変革、新規事業の創造やデジタルトランスフォーメーションの推進など、経営の中枢アジェンダ実現の支援に携わっている。東京工業大学工学部社会工学科修了、慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了。2021年3月よりユニ・チャーム取締役、2021年4月より早稲田大学ビジネススクール教授を兼務
水本 尚宏(みずもと たかひろ) 東京大学協創プラットフォーム開発株式会社 投資責任者
大和SMBCキャピタル(現、大和企業投資)にてIT・医療などハイテク分野へのベンチャー投資を経験し、昭和シェル石油に転職。タスクフォースリーダーとして決済プロジェクト、新電力プロジェクト、店舗のデジタルトランスフォーメーションなど、新サービス企画から市場導入までを主導。2017年より東大IPCにて再度ベンチャー投資業務を担当しつつ、1stRoundを創設。その後、AOIファンドを立ち上げた。京都大学院修了(技術経営学)、弁理士試験最終合格(2004年)。
株式会社トレードワルツ 取締役 CEO 室長 染谷 悟氏
2010年、三菱商事入社。日米欧で取引管理システムの開発・運用担当後、三菱商事RtMジャパンの立ち上げ支援、インドオフショア開発のブリッジエンジニア、電力関連事業の財務管理やスタートアップ企業投資、デジタル戦略部などを経て2020年11月から現職。
株式会社アーバンエックステクノロジーズ 代表取締役 前田 紘弥氏
東京大学工学系研究科社会基盤学専攻修了後、三菱総合研究所では、インフラ関連の民間企業に海外進出支援、新規事業立案等のコンサルティング業務に従事。2020年に株式会社アーバンエックステクノロジーズ創業。2020年未踏AD事業。工学博士。
株式会社Yanekara 代表取締役 COO 吉岡 大地氏
高校卒業後単身渡独し、フライブルク大学に入学。2018/19年にはイギリスのウォーリック大学に1年間留学し、エネルギー政策について研究。その後、日本のエネルギー業界で複数のインターンを経験。ドイツ、イギリスを中心にヨーロッパと日本のエネルギー政策とビジネスに知見がある。
東大IPC水本の挨拶
水本:はじめまして、東大IPCの水本と申します。東大IPCは東京大学の子会社で、主にベンチャー投資を行っています。本日のイベントにご参加いただいている3社は、いずれも我々の投資先となっています。
本イベントにご参加いただいている方々の目的はそれぞれ異なるかと思いますが、我々としてはぜひ日曜日という貴重な時間を、将来の転職先であったり、今後の副業先であったり、今後につながる出会いの場としてご活用いただければ幸いです。
WBS杉田教授の挨拶
杉田:まずはこのような機会を作っていただきまして、東大IPCの小澤さんや水本さんにお礼を申し上げます。また、先ほど水本さんからもお話があったように、日曜日の貴重な時間にご登壇いただける3社の皆様も、本当にありがとうございます。
最近、WBSの学生の中で、スタートアップへの興味が高く、将来スタートアップを目指したいと考える人がかなりいることがわかりました。そして、その数は増えていると感じています。また、これからスタートアップを自身で行うかは別として、企業の中で新規事業開発に携わる場を見つけたいと考える人も沢山います。本日はこうした志を持った人が中心となって集まっていますので、彼らがさまざまな形で交流していく機会になれば良いと思い、本イベントを開催いたしました。
なお、スタートアップ3社のピッチセッション終了後には、3グループに分けてディスカッションを行っていただきます。現在、WBSの学生はさまざまな企業に勤めており、その立場での知見を持っていると思います。一方で、スタートアップの可能性は、さまざまな産業・企業と連携していく中で拡大していくものと考えていますので、ディスカッションではメンバー同士でアイデアを交わしながら、新たなものを生み出すきっかけにしていただければ幸いです。本日はよろしくお願いいたします。
ピッチセッション①トレードワルツ
染谷:当社は「貿易の未来をつくる」をテーマにプラットフォームのサービスを作って運営している会社です。エヌ・ティ・ティ・データさまのブロックチェーン技術を借りながらプラットフォームサービスを作りまして、そこに10社が共同出資や出向を行いながら事業を運営し、日本全国にいる1万3,000社の貿易関連企業にサービスを提供していきたいと考えています。
貿易の課題
染谷:私たちのサービス対象は、「貿易におけるアナログな手続き」という課題です。
昨今、貿易関連企業では、それぞれ情報のやりとりの効率化を図るべくデジタル化を推進していますが、ほとんどの取組では1業種・1企業グループ内でのデジタル化に留まっており、企業間や政府手続きを含むBtoB・BtoC領域におけるコミュニケーションについては依然として着手できていません。これらの領域では、「決まった企業間フォーマットが存在していない」「セキュリティの高い通信手段がない」といった理由で、現在でもなお紙・PDF付きのメール・FAXなどが横行しており、非常にアナログです。
これに伴い、アナログ⇔デジタル情報の打ち替えなどの非効率性などの課題が深刻化しています。世界銀行の調査によると、EUでは2時間ほどで1回の輸出入の手続きを済ませられる一方、日本では72時間と実に34倍以上の時間がかかるほか、中国・ASEANでは240時間かかります。つまり、EUが1日で行う貿易手続きが日本では1カ月かかり、中国・ASEANでは4カ月かかる、ということです。
そのほかにも、現状の貿易には、紙ベースで在庫や物流の状況がわかりにくく国際物流の乱れを解決しづらい、少子高齢化の影響で貿易知識を持つ人材が枯渇化しており、現場が回らなくなってきた、という課題が存在しています。
課題の解決策
染谷:これまで人と紙の信頼で成り立ってきたアナログ手続きだけでは貿易の先行きが不安と感じ、私たちは日本の主要な貿易関連企業間で「日本唯一の標準的な電子でコミュニケーションを取れるプラットフォーム」として「TradeWaltz」を開発しました。
TradeWaltzではブロックチェーン技術を活用し、「改ざんされることなく安心・安全な状況でデータをやりとりできる」という状況を担保しつつ、日本と相手国の貿易実務者の方をつないでいくことが可能です。
過去の実証試験の結果、TradeWaltz導入により、日本では手続きの時間・コストを44%効率化でき、ASEANでは60%効率化できると示唆されました。さらに、これまでPDFなどで散らばっていた在庫・物流状況を可視化・一元化して課題対応を早急にできるほか、これまで特殊な知識が必要とされた手続きも、過去の履歴データなどを用いて判断するAIを活用することで、特殊な知識のない一般の方でも抜け漏れなく業務を遂行できるます。このようなサービスを2023年に実現に向けて進めています。
TradeWaltzの特徴
染谷:これまで貿易関連企業が自社の1業種を効率化するために作ったプラットフォームは多く存在していますが、各業種・プラットフォームで扱うデータをつなぐ部分がアナログであるという課題を解決できるプラットフォームは世界中で5つしかなく、日本では私たちのTradeWaltzのみです。4年間の開発期間をかけて、全業種が持つ幅広い書類をカバーできるデータ構造を持てるようになりました。
PDFではなく「構造化データ」と呼ばれる流用できるデータの状態で保管できるため、自社の中でも1つの書類データを活用して他の書類を自動生成できるほか、流用可能データを他のプラットフォームと連携することも可能です。
私たちはいうなれば「日本の貿易実務者にとってのiPhone」を目指しており、手元のデータを電子化しつつ、私たちを経由すれば世界中のサービスをApp Store上で使用でき、新しい貿易のやり方ができるという形で世界中の貿易DXを推進していこうと考えています。
参画してほしい人物像
染谷:「日本発のBtoB型Amazonのようなサービスをつくる」という壮大な夢を叶えるべく、トレードワルツでは仲間を積極的に募集しています。現在、Amazonの全世界の最年少の事業責任者をヘッドハンティングし営業責任者に任命したり、フルタイム41人に加えてAmazon・メルカリ・IBM・SAPなどの兼業スタッフも30人抱えていたりするほか、高校生や大学生のインターン生も活動しているなど、さまざまなメンバーが在籍しています。
私たちの仲間として、日本全体の貿易DXを世界に通用させるべく尽力していただける方がいらっしゃいましたら、ぜひお声がけください。
ピッチセッション②アーバンエックステクノロジーズ
前田:私たちの会社は「都市インフラをアップデートし、すべての人の生活を豊かに」をミッションに掲げています。私たちが豊かに生活できているのは、これまで人が増える前提で高度経済成長期にさまざまなインフラが整備されてきたためです。ただし、今後人口が減少していくことを考慮すると、これまでの人数規模で使ってきたインフラを使い続けることは難しいです。
私たちは、2025年までのビジョンとして「しなやかな都市インフラ管理を支えるデジタル基盤をつくる」を掲げ、インフラ管理にフォーカスした事業展開を考えており、都市インフラ管理として点検・施工管理などの事業を進めています。
都市のインフラは多種多様ありますが、私たちは道路のメンテナンスからアプローチを始めています。これは、まちづくりを行う際、最初に作るものが道路であるためです。
道路点検の手法は大まかに、「専用車両」と「目視点検」があります。2つの手法にもそれぞれ課題があることから、これを解決すべく、その中間に位置するようなソリューションをつくっています。
解決する課題
前田:日本国内だけでも道路は120万kmと非常に長く、点検コストが4万円/kmかかると考えると、1回点検するだけで約500億円かかってしまうので、網羅的に、高頻度にデータ収集することは非現実的です。そのうえ、専門職員が不足しています。土木の知見を持つ専門職員がいない自治体は全国で30%といわれており、深刻な社会課題です。
市場規模
前田:インフラメンテナンスの市場規模は5兆円ありますが、その中で道路は1兆円です。舗装の管理・点検だけでいうと約200億円です。それほど大きな市場とはいえませんが、最初に着手する事業としては丁度良いと考えて、事業を進めています。
事業の概要
前田:具体的な事業として、スマホ・ドラレコを用いた道路の総合管理ツールRoadManagerを開発・展開しています。仕組みは非常にシンプルで、スマホやドラレコで映像を取得し、これらのエッジデバイス上で道路点検のソフトウェアを起動させ、異常があるときだけクラウドにデータを送信し、Web上で道路の状態を確認できるというものです。
これにより、道路の管理を行っている行政の担当者が道路に行かなくとも異常箇所がわかるようになります。そのほか、年度単位などでの道路工事の順番を定量的に分析する機能も備わっています。
現状、全国22の自治体で導入していただいており、今年の4月からは東京都のほか、港区・目黒区・大田区、神奈川県などで私たちのツールを活用してもらっています。実際に尼崎市では、RoadManagerを活用することで、ポットホール(アスファルト舗装の道路のくぼみ・へこみ)の補修件数が約3倍に増えています。都市の課題は基本的に世界共通であるため、海外展開も積極的に検討しています。
参画してほしい人物像
前田:経営企画・COO候補の方を募集しています!2050年の日本の都市を守り、すべての人にとっての豊かな生活の基盤を作っていく、そんなことに関心のある方と一緒に働かせていただきたいです!
ピッチセッション③Yanekara
吉岡:Yanekaraの事業である「複数台EVに特化した充放電システム」を紹介いたします。現在、Yanekaraは約25名のメンバーを抱えていますが、ハードウェアからソフトウェアまで、IOTからクラウドまで一気通貫で開発できる点に強みを持っています。
ミッション
吉岡:私たちの掲げるミッションは「地球に住み続ける」という非常に壮大なものです。主に20代前半で構成される私たちのチームにとって、気候変動の課題は生存を脅かすものだと考えています。この課題に対して、私たちの技術および地熱発電の社会実装を行っていきながら、「住み続けられる地球」の実現につなげたいと考えています。
地球に住み続けるために必要と考えているのが、再生可能エネルギーの普及です。最近は日本でも徐々に進んできていますが、普及レベルまで進めるにはバックアップの電源が必要不可欠です。
私たちはバックアップの電源の普及を後押しするために、電気自動車内の蓄電池を活用し、クラウドによって郡制御しながら、あたかも1つの巨大な蓄電池のように制御・運用することで、バックアップの電源を大量に作り出すことに取り組んでいます。
EVアグリゲーションビジネスの現状
吉岡:バックアップの電源を作り出す際に必要となるものに充放電器と呼ばれるハードウェアがありますが、現在、充放電器の市場のほとんどをニチコンさんが占めています。私たちは、このニチコンさんのソリューションに改善点があるのではないかと考えて、独自の充放電器を作り、差別化したうえでクラウドへの接続まで行き着くことを目指しています。
オーナーに提供する価値
吉岡:Yanekaraの技術により、ユーザーさまにピークカット(需給逼迫対応)の価値や、電力市場での収益化、災害時の電力供給などの価値を提供できます。
基本的なビジネスモデルとしては、まずBtoBの市場への参入を図っていきます。自治体のほか、カーシェア、物流会社、デベロッパーなどの事業会社さんに特化した複数台用のEV充電システムの開発に取り組んでいます。全体として25兆円ある電力市場のうち、10兆円の市場への参入を目指しています。
参画してほしい人物像
吉岡:Yanekaraでは非常に若いメンバーが活躍していますが、30代〜50代の方にも参画いただいており、現在もフルコミットできる経験豊富な方を積極的に募集しています。
大企業さんにプロダクトを売っていきたいので、特に事業開発に関してお力添えをいただけるような方を中心に、ぜひお声がけください。
グループディスカッション、懇親会
スタートアップ3社のピッチセッション終了後、スタートアップの経営者およびMBAスクール生を交えながら、以下の2つのテーマでグループディスカッションを行い、その後は懇親会で和気あいあいと過ごしました。
登壇企業のサービスがどのような産業/企業に対して新たなイノベーションを起こせるか
登壇企業のサービスがどのような産業/企業の課題解決に役立つか
東大IPCについて
東大IPC(東京大学協創プラットフォーム開発株式会社)は、東京大学の100%出資の下、投資、起業支援、キャリアパス支援の3つの活動を通じ、東京大学周辺のイノベーションエコシステム拡大を担う会社です。投資事業においては総額500億円規模のファンドを運営し、ディープテック系ベンチャーを中心に約40社へ投資を行っています。
キャリアパス支援では創業期~成熟期まで、大学関連のテクノロジーシーズを持つスタートアップへの転職や副業に関心のある方とのマッチングを支援しており、独自のマッチングプラットフォーム「DEEPTECH DIVE」を運営しています。
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