VCの種類と特徴を紹介
VCの種類と特徴
VC(読み方:ブイシー)とは、「ベンチャーキャピタル」の略であり、VCを略さずに書くとventure capitalです。高い成長率が見込まれる未上場企業(例:スタートアップ、ベンチャーなど)に対して、主として出資の形で投資する会社をさします。出資を行う際、VCは資金提供の対価として、株式を取得するのが一般的です。
ベンチャーキャピタルは出資や経営支援などを行うことから、スタートアップやベンチャーにとって重要な存在だといえます。
VCについて詳しく知りたい場合は、以下の記事で解説しています。
とはいえ、ひとことにVCといっても、企業ごとに運営主体や投資に対する考え方、「どのステージの企業を対象に投資を行うのか」といった点は異なっており、その種類はさまざまです。そこで今回は、VCの種類と特徴、それぞれに属する企業の一例を紹介します。
- 独立系
- 金融機関系
- 政府系
- 大学系
- 海外系
- 地域特化型
- 独立系インキュベーター/アクセラレーター
独立系
親会社を持たずに資本が独立しているVCの種類をさすのが一般的です。ひとことに独立系といっても、投資対象とする事業領域・事業ステージなどはそれぞれのVCにより異なります。
事業会社の系列を持たないため、事業提携は行わずに出資に対する値上がり益(キャピタルゲイン)の獲得を狙う方針が多いという特徴があります。
独立系VCと言われているVC・VCグループの例は、下記のとおりです(順不同)。
- 日本ベンチャーキャピタル(1996年設立)
- 日本アジア投資(JAIC、1981年設立)
- ジャフコグループ(1973年設立)
- グローバル・ブレイン(1998年設立)
- グロービス・キャピタル・パートナー(2006年設立)
金融機関系
銀行・証券会社・保険会社など金融機関グループの関連会社に位置付けられているVCの種類をさします。日本のVCの多くは金融機関系に該当するといわれており、金融機関として
の強みを生かした事業連携・経営支援などに特徴が見られます。
金融機関系VCと言われているVCの例は、下記のとおりです(順不同)。
- ニッセイキャピタル(日本生命グループ、1991年設立)
- 三菱UFJキャピタル(三菱UFJフィナンシャルグループ、1974年設立)
- SMBCベンチャーキャピタル(三井住友銀行グループ、2005年設立)
- SBIインベストメント(SBIグループ、1996年設立)
- みずほキャピタル(みずほフィナンシャルグループ、1983年設立)
- 三井住友海上キャピタル(三井住友海上火災保険、1990年設立)
- DBJキャピタル(日本政策投資銀行グループ、2010年発足)
政府系
国・地方公共団体・公的機関などが主体となって設立したVCの種類をさします。技術力のある中小企業の支援・国内産業の活性化・日本企業のグローバル化などを推進するために、優れた技術力を持つ未上場企業に対して投資を実施するケースが見られます。
政府系VCの代表的な企業の1つに、INCJが挙げられます。INCJは、2018年に既存の官民ファンド「産業革新機構」から新設分割によって発足したVCです。
もともと産業革新機構には、日本の古い産業構造の課題を解決するための中長期的なリスクマネーの出し手として、民間ファンドでは行えない投資を実現する目的を掲げる官民ファンドとして設立されたという経緯があり、こうした特徴をINCJも引き継いでいます。
これまでに、半導体メーカー「ルネサスエレクトロニクス」や、液晶パネルメーカー「ジャパンディスプレイ」など、上場企業の再編や再構築における資金の出し手として実績を積んでいます。
また、中小企業を対象とした政府系VCとしては、中小企業の支援・育成を目的に掲げる「中小企業投資育成」が代表的です。このVCでは、1963年に施行された中小企業育成株式会社法にもとづき、地方公共団体・金融機関などから資金を受け入れ、中長期的な時間軸で中小企業に対して資金提供・経営支援を行っています。東京・大阪・名古屋でそれぞれのエリア名を冠する投資育成会社が事業を展開しており、これら3社で全国をカバーしています。
上記以外の政府系VCと言われているVCの例は、下記のとおりです(順不同)。
- 産業革新投資機構(JIC、2009年設立)
- クールジャパン機構(海外需要開拓支援機構、2013年設立)
大学系
大学や研究機関関連の未上場企業に対して投資を行うVCの種類をさします。大学や研究機関から生み出された最先端の研究・技術シーズの社会実装に挑むスタートアップやベンチャーなどに対して、必要とされる支援・投資を行っています。
大学系VCと言われているVCの例は、下記のとおりです(順不同)。
- 東京大学エッジキャピタルパートナーズ(UTEC、2004年設立)
- 東京大学協創プラットフォーム開発株式会社(東大IPC、2016年設立)
- 大阪大学ベンチャーキャピタル(2014年設立)
- 東北大学ベンチャーパートナーズ(2015年設立)
- 京都大学イノベーションキャピタル(2014年設立)
- 慶應イノベーションイニシアティブ(KII、2015年設立)
海外系
主に日本国外に拠点を持つVCの種類をさします。最大の特徴は投資額の大きさにあり、日本国内のVCと比べて、運営するファンドの規模が非常に大きいです。また、投資先が世界全体に及んでいるVCでは、実績・ノウハウを豊富に持っていることから、積極的かつ大規模な投資を行う傾向が見られます。
海外系VCと言われているVCの例は、下記のとおりです(順不同)。
- Sequoia Capital(1972年設立)
- Coral Capital(2019年設立)
- Google Ventures(2009年発表)
地域特化型
都道府県・市町村など特定地域における資源利用・産業の活性化などを主な目的として設立されたVCの種類をさします。地方の金融機関が出資者としてファンドに参加している場合が多く、地域密着型の事業展開を検討している場合、支援対象となる可能性が高いです。
地域特化型VCと言われているVCの例は、下記のとおりです(順不同)。
- 東北イノベーションキャピタル(2003年設立)
- 新潟ベンチャーキャピタル(2010年設立)
- 北海道ベンチャーキャピタル(1999年設立)
- DOGAN β(九州、2017年設立)
- ハックベンチャーズ(大阪市中心、2013年設立)
独立系インキュベーター/アクセラレーター
インキュベーター(英語:Incubator)とは、シード期以前の未上場企業や起業家に対して「インキュベーション(起業および事業の創出をサポートするサービス・活動)」を行っている組織です。事業の成長や企業価値の向上を目的に、不足する経営資源(例:資金・オフィス・ソフト)、事務・経理に関する経営指導、パートナーマッチングなどを提供しています。
インキュベーターが提供するオフィスには、インキュベーションマネージャーと呼ばれる専門家が常在していることもあり、起業家に対して相談・サポート・経営ノウハウなどを提供する総合アドバイザーとしての役割を果たしています。なお、インキュベーターの運営主体は、大学・地方自治体・公益法人などの公的機関が担うケースが比較的多いです。
インキュベーターの詳細は、以下の記事をご確認ください。
アクセラレーター(英語:Accelerator)も、インキュベーターと同じように、未上場企業や起業家に対して、少額出資・経営のノウハウやアドバイス・設備や施設の貸し出し・パートナーマッチングなどの支援を提供している組織です。しかし、「既存事業の成長・拡大を目的に、すでに創業して成長段階にある企業(シード期以降の未上場企業、一般企業における新規事業部門など)に対して支援を行っている」点がインキュベーターとは異なります。
アクセラレーターは、3カ月〜6カ月ほどの期限を設けたプログラムの提供を通じて支援を提供し、未上場企業の成長を急速に進めます。なお、アクセラレーターは、大企業が運営主体となるケースが比較的多いです。運営する大企業側にとっては、社内の研究開発・新規事業の担当部署では手掛けにくいような斬新な事業モデル・イノベーションを有するスタートアップと接点を持つことで、自社事業との連携や事業モデルの共有を行える点にメリットがあります。その一方で、スタートアップ側からすると、大企業の持つ豊富なリソースを提供してもらえるため、双方にメリットがあるといえます。とはいえ、近年は、地方自治体が運営主体となるケースも多いです。
独立系インキュベーター・アクセラレーターと言われているVCの例は、下記のとおりです(順不同)。
- ジェイ・シード(2000年設立)
- insprout (インスプラウト、2006年設立)
- サムライインキュベート(2008年設立)
- スカイランドベンチャーズ(2012年設立)
- Open Network Lab(2010年設立)
アクセラレーターについて詳しく知りたい場合は、以下の記事で解説しています。