PaaSとは?メリット・デメリット、SaaSやIaaSとの違いを解説
【目次】
PaaSとは?
PaaSとは「Platform as a Service」の略称であり、「サービスとしてのプラットフォーム」を意味する言葉です。日本語での読み方は「パース」です。
より詳しく説明すると、PaaSとは、アプリケーションの実行に必要なプラットフォーム(例:ネットワーク、サーバーシステム、OS、ミドルウェアなど)を、インターネットを経由して利用できるようにするサービスのことです。
PaaSのメリット・デメリット
本章では、PaaSを導入した場合に生じる可能性のある主なメリット・デメリットを順番に取り上げます。
メリット
はじめに、PaaSを導入するにあたって期待されるメリットの中から、代表的な5つをピックアップし、順番に解説します。
開発をすぐ始められる
PaaSではクラウド上にアプリケーションの実行に必要なプラットフォームが用意されており、ユーザーは導入後すぐにこれらのサービスを利用できます。
そのため、ミドルウェアのインストールやバックアップの設定といった作業を行う必要がなく、これらの作業中に開発チームを待機させておく必要もないことから、ユーザーの負荷軽減につながります。
このように、PaaSの利用開始直後から、自社の取り掛かりたいアプリケーション開発を開始できる点は大きなメリットです。
開発の時間を短縮
PaaSの導入によって利用できるようになるプラットフォームには、ワークフロー・ディレクトリサービス・セキュリティ機能・検索といったコーディング済みのアプリケーションコンポーネントが組み込まれているものもあるため、新たなアプリケーション開発にかかる時間を短縮できます。
環境の複製および配布が簡単
PaaSにより提供されるプラットフォームを活用すれば、同じ環境のコンピュータを簡単に複製・配布できます。そのため、必要となったときに必要な分だけ開発環境を準備することが可能です。
また、コンピュータをテスト前の状態に戻すことも簡単に行えるため、システム開発における検証・テストを行う際、大量のコンピュータを用いて作業を効率的に進められます。
初期費用および運用コストを抑えられる
従量課金制のPaaSを導入すれば、ユーザーの使用した分しか費用が発生しないため、運用コストの抑制につながります。また、ハードウェア・OSなどを購入せずに済むため、初期投資も抑えることが可能です。
そのほか、開発に必要な機器を安全な設置場所に確保しておくためのコストも発生しないため、費用対効果を重視しているならばPaaSの導入は非常に有効だといえます。
柔軟に拡張ができる
オンプレミスの方式(ITリソースを自社やデータセンター内に設置し、ユーザー自身で管理・運用を行う方式)を採用すると、開発機能が無駄になったり不十分になったりしたときに、スペックの拡張・縮小の対応を柔軟に行うことが難しいです。
これに対して、PaaSでは、必要なスペックの増減に応じて利用内容を柔軟に変更できるため、無駄な費用が発生しません。
デメリット
次に、PaaSの導入にあたって発生するおそれのあるデメリットの中から、代表的な2つをピックアップし、順番に解説します。
セキュリティはベンダーによる
PaaSの場合、ユーザーはベンダーから提供されたクラウドを利用させてもらいますが、セキュリティの整備はベンダー側に委ねられます。そのため、万が一、ベンダー側にウイルスが侵入してシステムが乗っ取られてしまった場合、ベンダー側はすべての権限を失い、ユーザー側の作業内容・個人情報などが流出するおそれがあるのです。
昨今はユーザー側のセキュリティ面に関する意識向上を受けて、ベンダー側で十分な対策を講じているケースが多くなっているので過度に気にかける必要はないと言え、PaaSを導入する場合は、通信の暗号化対策・解約後の顧客データの取り扱いなど、個人情報の取り扱いに関するポリシーを打ち出しているベンダーかどうかチェックすることが望ましいです。
別の開発環境への移行が困難
PaaSでは開発環境と実行基盤を外部から借りて開発を進めることから、特定のPaaS環境に対する依存が強まってしまうと新たな環境への移行が困難になるリスクが存在します。
つまり、別のベンダーに簡単に乗り換えられなくなってしまうため、導入するPaaSを選ぶ際は、慎重に検討しなければなりません。
そのほか、PaaSのデメリットとして、インターネットの障害時に利用できない点も把握しておきましょう。
PaaSのサービス例
以下では、PaaSの代表的なサービス例をそれぞれの概要と併せて簡単にまとめました(順不同)。
- AWS(正式名称はAmazon Web Services。大手通販会社Amazonの提供するクラウドサービス)
- Microsoft Azure(Microsoftの提供するクラウドサービス)
- GCP(正式名称はGoogle Cloud Platform。Googleの提供するクラウドサービス)
これらのサービスは、PaaSだけでなくIaaS(詳しくは後述します)の領域もカバーしており、ユーザーのニーズに合わせてさまざまな環境を提供するものと理解しておきましょう。
SaaS、IaaSとの違い
PaaSと名称の似たサービスに「SaaS」や「IaaS」が挙げられますが、これらはそれぞれ特徴が大きく異なります。ここからは、PaaSとSaaS、IaaSに見られる違いを解説します。
SaaSとの違い
SaaSとは「Software as a Service」の頭文字を取った言葉で、日本語では「サース」や「サーズ」と読みます。簡単にいうと、PaaSのプラットフォームに加えてソフトウェアまでを、インターネットを経由してユーザーが利用できるようにするサービスのことです。
SaaSの場合、ユーザー側にとっては、ソフトウェアまで提供されるためにPaaSよりも自由度が低下するものの、構築するための手間がかからない点は魅力的です。
SaaSについてさらに理解を深めたい場合は、以下の記事をご確認ください。
IaaSとの違い
IaaSとは「Infrastructure as a Service」の頭文字を取った言葉で、日本語での読み方は「イアース」や「アイアース」です。IaaSでは、情報システムの稼動に必要なインフラとなるネットワークやサーバーシステムなどを、インターネット経由で利用できるようにします。
IaaSの場合、PaaSと比べると仕様上の自由度が高まるものの、設計やサーバの管理・運用などを行うために、ユーザー側に高度なITスキルが求められる点に大きな違いがあります。
IaaSの詳細は、以下の記事で解説しています。
まとめ
PaaSとは、アプリケーションの実行に必要なプラットフォームを、インターネットを経由して利用できるようにするサービスのことです。
PaaSを導入することで、開発を即座に開始できる、開発時間を短縮できる、容易に環境の複製および配布を行える、初期費用および運用コストを抑制できる、柔軟に拡張できるなどのメリットが期待できます。
その一方で、セキュリティはベンダーに委ねられる点や、別の開発環境への移行が難しい点などはデメリットとして考えられています。
PaaSとSaaS、IaaSの違いをまとめると、ユーザーに提供されるサービスの構成要素の段階によって以下のとおり区別できます。
- PaaS(IaaSの内容に加えて、OS・ミドルウェアなども提供する)
- SaaS(PaaSの内容にアプリケーションを加えて提供する)
- IaaS(サーバーやネットワークなど、ITインフラを提供する)