JDR(日本型預託証券)とは?メリット、上場銘柄を紹介
【目次】
JDRとは?
JDR(正式名称:Japanese Depositary Receipt)とは、日本型預託証券(代替証券の一種で、信託銀行等により海外企業が本国で発行した株式の預託を受けて発行されるもの)のことであり、外国有価証券を受託有価証券として日本国内で信託法にもとづき発行される受益証券発行信託の受益証券のことです。
アメリカにおけるADR(正式名称:American Depositary Receipt)や、ヨーロッパにおけるGDR(正式名称:Global Depositary Receipt)などと同じように、外国の株式・債券・ETF(正式名称:Exchange Traded Fund)などを日本国内でスムーズに流通させるために整備された枠組みをさします。なお、ETFとは、日経平均株価・東証株価指数など特定の指数の動きに連動する運用成果を目指し、金融商品取引所に上場している投資信託のことです。
ADR・GDRなど欧米の預託証券は、さまざまな要因(例:自国の規制)によって有価証券そのものを他国の取引所に上場できない外国企業が、主として他国の証券市場で資金調達を行う際に利用されることで発達し、活発に取引されています。
そこで、日本においても、これらの欧米の預託証券と同様に、外国企業に対して、日本の金融・資本市場を通じて資金調達を実施してもらうことや、日本の投資家に対して幅広い資産運用対象を提供することなどを主な目的として、2007年9月の金融商品取引法改正に伴いJDRが導入されました。
JDRのメリット
本章では、JDRを用いる代表的なメリットを、発行会社・投資家それぞれの視点に分けて、順番に解説します。
発行会社のメリット
まずは、JDRを発行する会社に期待されるメリットの中から、代表的なものを2つピックアップし、順番に解説します。
資金調達が可能
外国企業が自社の株式を直接上場することが困難もしくは不都合である場合(例:株式の発行国で外国投資家が当該発行国の会社の株式を取得することが規制されているケースや、株式の発行国の国内法で国外の証券取引所における株式の上場が認められていないケース)、JDRを上場させることで資金調達を行えます。
外国証券取引口座の開設が不要
日本国内の投資家がJDRを取り扱う際は、外国証券取引口座の開設が不要です。そのため、JDRを活用することで、外国証券取引口座を持たない国内投資家からの投資を呼び込めます。
投資家のメリット
続いて、投資家側から見たときのJDRに期待されるメリットの中から、代表的なものを2つピックアップし、順番に解説します。
国内株式等と同じ取引・税制を適用
前述のとおり、基本的に外国の株式やETFを売買する場合は外国証券取引口座の開設が必要ですが、JDRではそれが不要となり、国内株式等と同様に取引を行えます。信用取引についても外国証券と比較すると広範に対応されており、内国証券として取り扱われることから、多くの証券会社で信用取引が可能です。
また、JDRに国内株式等と同じ税制が適用される点も、投資家からすると利便性が高いです。法律上、外国の株式やETFなどを特定口座に入れること自体は認められているものの、実際には対応している証券会社は少ないのが現状です。しかし、JDRとして証券化されることで、ほとんどの証券会社で特定口座を利用できるようになるため、投資家の取引ハードルを下げることが期待されます。
日本円、日本時間で取引可能
昨今は海外の上場企業の株式やETFなどについても一部の証券会社で取引できるものの、外貨での取引が求められ、取引時間の制約も課されます。しかし、JDRであれば、日本円・日本時間での取引が可能であり、投資家からすると利便性が高いです。
JDR上場銘柄(2022年6月時点)
本章では、2022年6月時点での外国株のJDR上場銘柄を3つ紹介します。
テックポイント・インク(コード:6697)
テックポイント・インクは2012年に設立されたアメリカにある企業で、監視(防犯)カメラシステムと車載カメラシステム向けの半導体の設計および販売を手掛けています。2017年9月、外国株JDR第1号案件として上場しました。
JDRを通じて日本に上場した主な理由としては、人材確保・知名度向上・将来的な日本の半導体企業のM&Aなどが挙げられています。
2022年4月末時点におけるテックポイント・インクの発行済株式総数は18,049,979株、上場JDR数は6,368,057口、時価総額は177億円(上場JDRベースで62.4億円)と発表されています。
参考:テックポイント・インク
オムニ・プラス・システム・リミテッド(コード:7699)
オムニ・プラス・システム・リミテッドは、2002年に設立されたシンガポールにある企業です。エンジニアリング・プラスチックを軸に、顧客のニーズに応じたカタログ販売や汎用品(ジェネリック)の販売を行うエンジニアリング・プラスチックの流通事業および、顧客ニーズにより深く関与して高耐久・高耐熱・デザイン性を有する樹脂コンパウンド(混合、着色など)を行う開発・製造事業を手掛けています。
2021年6月にJDRを、東京証券取引所マザーズ(外国株)に上場させました。
2021年7月29日時点におけるオムニ・プラス・システム・リミテッドの発行済株式総数は21,057,844株(JDR公募分含む)、上場JDR数は1,012,000口です。
YCPホールディングス(グローバル)リミテッド(コード:7699)
YCPホールディングス(グローバル)リミテッドは、2021年に設立されたシンガポールにある企業(2011年に日本で創業した際の社名は、株式会社ヤマトキャピタルパートナーズ)です。投資銀行や戦略・オペレーション・製造業・消費財・ファイナンス・マーケティングなど各分野をリードする企業で活躍してきた人材を抱えており、アジアを中心に幅広い分野におけるアドバイザリーサービスを提供し、グローバル企業や現地企業の発展を支援しています。
また、プリンシパル投資事業として、投資先企業に対する資金や各分野のエキスパート人材、オペレーションサポートの提供を行っています。
2021年12月に、東京証券取引所マザーズ(外国株)に上場しました。
2022年1月18日時点におけるYCPホールディングス(グローバル)リミテッドの発行済株式総数は19,991,076株、上場JDR数は4,289,800口です。
まとめ
JDRとは日本型預託証券のことで、外国有価証券を受託有価証券として日本国内で信託法にもとづき発行される受益証券発行信託の受益証券をさします。
JDRを活用することで、発行会社側には「自社の株式を直接上場することが困難もしくは不都合である場合でも資金調達できる」「外国証券取引口座を持たない国内投資家からの投資を呼び込める」、投資家にとっては「国内株式等と同じ取引・税制が適用される」「日本円、日本時間で取引できる」などのメリットが期待されます。