電子定款とは?メリット・デメリット、作成・認証方法を解説

電子定款とは?

電子定款とは?

電子定款(英語:Electronic Articles of Incorporation)とは、電子文書形式(PDF)で作成された定款をさします。定款とは会社(法人)の組織・運営に関する根本規則のことで、「会社の憲法」とも呼ばれているものです。

以前は書面による定款しか認められていませんでしたが、2004年3月1日から電子定款による電子認証が可能となりました。

定款について詳しく知りたい場合は、以下の記事で解説しています。併せてお読みいただくことで定款の記載事項を把握できるほか、電子定款との違いも深く理解できますので、ぜひご確認ください。

定款とは?会社設立時に必須となる書類の記載事項、認証方法を解説

電子定款のメリット・デメリット

本章では、会社の設立にあたって電子定款を作成する場合に生じる主なメリット・デメリットを順番に取り上げます。

メリット

まずは、電子定款を作成する場合に生じるメリットの中から代表的な2つをピックアップし、順番に解説します。

印紙税4万円(※)が不要

電子定款を採用する最大のメリットは、印紙税(4万円)を節約できることです。定款を書面で作成する場合は印紙税法上の課税文書として扱われるため、印紙税として4万円の費用を支払う必要があります。これに対して、電子定款を作成する場合は印紙税法上の課税文書に該当しないことから、印紙税の4万円を支払う必要がありません。

ただし、次のデメリットで記載している必要なソフトや機材がそろっていない場合は、電子定款の採用により削減できる4万円と同程度の費用がかかってしまう点に注意しましょう。

(※)本記事公開(2023年4月)時点

オンライン申請が可能

ペーパーレス化が進んでいる現代において、オンライン申請・PC上での管理が可能な電子定款は魅力的です。ペーパーレス化を推進することで、業務生産性の向上やセキュリティ・内部統制の強化などが期待できます。

デメリット

電子定款の作成には多くのメリットがある反面、デメリットも存在します。ここではデメリットの代表例をピックアップして解説します。

ソフトや機材が必要

電子定款を採用する最大のデメリットは、定款の策定にソフト・機材が必要となる点です。電子定款を作成するために必要なものは以下のとおりです。

電子証明書付きのマイナンバーカード

電子定款に必要なものは、マイナンバーが書かれた紙(通知カード)ではなく、プラスチック製のICカード(電子証明書付きのマイナンバーカード)です。

電子証明書付きのマイナンバーカードは、申込から発行までに時間がかかることもあるため、電子定款の申請を検討している場合は早めに申請を済ませておくことが望ましいです。

電子署名ソフト

作成した定款をPDFに変換し、電子署名を挿入するためには、それに対応するソフト(例:Adobe Acrobat)を準備しなければなりません。

電子署名とは、簡単にいうと「その電子文書が正式なものであり、かつ改ざんされていないことを証明するもの」であり、文書における押印・サインなどと同等の役割を果たすものです。

電子署名プラグインソフト

これはPDF化した定款に電子署名を付与するためのソフトウェアです。前述したAdobe Acrobatを利用する場合は、登記・供託オンライン申請システムが提供するPDF署名プラグインソフトを使用してPDFに電子署名を付与できます。

参考:登記・供託オンライン申請システム「PDF署名プラグインについて」

ICカードリーダライタ

マイナンバーカードを読み込むために必要となるものです。購入する際は、マイナンバーカードの読み込みに対応しているICカードリーダライタかどうか入念に確認しましょう。

以上の4点が、電子定款を採用する際に必要となるソフト・機材の代表例です。これらのソフト・機材を一から揃えるとなると恐らく書面の定款を作成する場合と同程度のコストがかかりますが、すでにソフト・機材を持っているならばデメリットにはなりません。

参考:地方公共団体情報システム機構「ICカードリーダライタのご用意」

電子定款の作成方法(自分で作成)

電子定款の作成方法(自分で作成)

続いて、上記で記載した電子証明書付きのマイナンバーカードやICカードリーダなど必要なものがそろっている前提で、電子定款を自分で作成する方法を4つのステップに分けて順番に解説します。

①定款を作成する

まずは、定款を作成します。設立する会社の性質によって記載すべき事項は異なることから、状況に応じて定款を作成しましょう。なお、作成の段階で、公証役場で内容に問題がないかチェックを受けておくと、以降の手続きがスムーズに進みやすくなります。

公証役場でチェックを受けるためには、事前に電話・FAXなどで会社設立の定款チェックの依頼を行うのが一般的です。

②定款をPDFファイルに変換する

次に、PDFファイル作成ソフト(例:Word)を用いて定款をPDFに変換します。これにより、定款に電子署名を行うことが可能となります。

③ICカードリーダライタでマイナンバーカードを読み込む

PDFに変換した定款に電子署名を盛り込むための電子証明書は電子証明書付きのマイナンバーカードのICチップに保管されています。そのため、ICカードリーダライタを使用し、電子証明書を読み込む作業が必要です。

④定款(PDFファイル化済み)に電子署名を付ける

ICカードリーダライタを使用して電子証明書を読み込み、法務省登記・供託オンライン申請システム上で無料配布されている署名プラグインソフトを使用して電子定款のPDFデータに盛り込めば、電子定款が完成します。

電子定款の認証方法(株式会社では必要)

ここまでに解説した手続きで電子定款を作成しても、認証を受けない限り効力は生じません。そのため、電子定款の作成後は、速やかに認証手続きも済ませましょう。ちなみに、定款認証が必要になる会社形態は株式会社のみであり、持分会社(合同会社、合資会社、合名会社)では求められません。

電子定款の認証を受ける際は、まず「登記・供託オンライン申請システム」への登録が必要です。申請者の情報を入力しましょう。申請者の情報を登録したら、ダウンロード画面に移動し、申請用総合ソフトをダウンロード・インストールします。

続いて、インストールした申請用総合ソフトを使用して電子定款を送信します。送信先は本店所在地とする場所を管轄する公証役場です。電子定款の送信後は公証役場に電子定款を送信した旨を伝える電話をしておくと、手続きをスムーズに進められるうえに認証後に連絡をもらえるメリットがあります。認証完了の電話を受けたら、公証役場に出向いて定款を受け取ります。

公証役場に出向く際は電話やHPの予約フォームなどから予約が必要です。詳細は本店所在地とする場所を管轄する公証役場のHPで確認しましょう。

また、以下のものを持参しなければなりません。

  • 記録媒体(例:USBメモリ)
  • 電子定款(プリントアウト×2通)
  • 発起人(出資者)全員の印鑑証明書
  • 電子署名を行った発起人以外の委任状(発起人が複数いる場合)
  • 認証手数料(100万円未満:3万円、100万円以上300万円未満:4万円、その他:5万円)
  • 定款の謄本代(2,000円程度)
  • 実質的支配者となるべき者の本人確認書類
  • 発起人全員の印鑑

参考:登記・供託オンライン申請システム トップページ
日本公証人連合会「Q3. 定款の認証に要する費用、株式会社設立の費用等はいくらですか。」

電子定款は代行可能

電子定款は代行可能

電子定款の場合、一般的な書面での作成時と比較して印紙代はかからないものの、専用のソフト・機材を新しくそろえる場合には、費用面でむしろ高くなってしまうおそれがあります。費用面だけでなく時間・労力面でもコストがかかるため、これに抵抗を感じる場合には行政書士・司法書士などの専門家に代行してもらうのも1つの手段です。

定款認証までの報酬額はそれほど高くなく、目安は1万円から3万円ほどです。もしも新たにソフト・機材の購入が求められるならば、コスト・手間を考慮して依頼した方が費用を抑えられる可能性があります。

また、専門家に代行を依頼すれば、定款の作成・認証・法人登記に至るまで、ワンストップサービスとしてサポートしてもらえるため、確実で安心だといえます。

まとめ

電子定款とは、電子文書形式(PDF)で作成された定款のことです。印紙税4万円が不要となるほか、ペーパーレス化が進む現代でオンライン申請・管理が可能な点は魅力的です。ただし、ソフト・機材をそろえなければならない点には注意しましょう。

電子定款の費用を抑えたい場合や作成・認証の手続きに手間を感じる場合などには、専門家に代行を依頼するのも1つの方法です。

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