エンジェルラウンドとは?スタートアップ最初期の資金調達を解説
【目次】
エンジェルラウンドとは
エンジェルラウンドとは、別名、プレシードラウンドとも呼ばれており、シードラウンドやシリーズAなどとともに、投資ラウンドにおける1つの段階として位置付けられています。投資対象のスタートアップは、創業前後のプロダクト・サービスがまだ形になっていないアイデア段階であることが多いです。
多くの場合、エンジェルラウンドにおけるスタートアップは最初期であるため、アイデアのみが存在し、メンバーや顧客などをほとんど抱えていない状態にあります。また、資金調達額は数百万円~数千万円程度、調達期間は1日〜1カ月程度と相対的に少額・短期間でディールクローズとなるケースが多いです。
調達資金の主な用途は、製品やサービスの開発体制を構築するための人材の確保が挙げられます。
エンジェルラウンドの語源
エンジェルの語源は、ヨーロッパの演劇界やアメリカの映画業界などに遡ることが可能で、「事業を個人的に支援する資産家」をエンジェルと呼んだことに由来します。それ以来、現在においても、創業から間もない企業に対して個人の責任で資金を提供する投資家のことを、天使のようなイメージから、エンジェル投資家と呼んでいます。
なお、「エンジェル投資」の言葉が正式に使用され始めたのは1978年であると考えられており、ニューハンプシャー大学(アメリカ)のベンチャーリサーチセンター創設者であるウィリアム・ウェッテル氏が、この表現を用いたことで知られています。
エンジェルラウンドで資金調達する際の注意点
エンジェルラウンドにおいてスタートアップが資金調達を行う際、投資家に株式を渡し過ぎると、経営権を奪われてしまうおそれがあります。実際、金融知識の少ない若手の起業家が、悪意のある投資家から出資を受けて、対価として多くの株式を渡してしまうケースが少なからず見受けられます。
原則として、企業の経営権は持株比率(出資比率)で決まります。例えば、資金調達によって持株比率が経営者70%、投資家30%となったケースでは、会社法において会社の70%は経営者が所有し、30%は投資家が所有しているものとみなされます。「所有している」ということは、持株比率次第で、投資家に経営の実権を握られてしまうおそれがあるのです。
具体的には、もし、外部の出資比率が50%を超えた場合、定款に定めがなければ、取締役を解任できる権利を外部に与えてしまいます。最悪のケースでは、経営者の立場を失いかねません。
また、資金調達に際して、契約に事前承認条項が盛り込まれているケースもあり、入念に確認せずに契約を締結してしまうと、経営者が自由に経営できない状態に陥る可能性もあります。
以上の理由から、特に会社の設立初期の資金調達にあたっては、投資家に株式を渡し過ぎないよう注意しなければなりません(一般的に、エンジェルラウンドでは、数%〜10%程度の株式を投資家に渡して資金調達を行います)。加えて、投資契約書の内容をあらかじめ十分に確認しておきましょう。
スタートアップについて以下記事で解説しています。併せて読むことで上記注意点をより意識できますので、ご一読ください。
エンジェルラウンドでの資金調達事例
本章では、東京大学発のスタートアップによるエンジェルラウンドでの資金調達事例を2件取り上げます。
発表年月 | 企業名 | 資金調達額 | 事業概要 |
2020年12月 | ASTROFLASH | 非公開 | ・超小型人工衛星の設計開発・運用 ・超小型人工衛星を用いたサービスの提供 |
同年5月 | LocationMind | 4億円 | ・位置情報ビッグデータを用いた人流の推定や独自開発のAIアルゴリズムによる人流の予測を提供 ・IoTセンサを用いた位置情報解析及びIoTネットワークインフラの提供 ・測位衛星からの信号を活用した先端的事業の開発と支援(高精度測位及び、特許技術である測位信号に対するセキュリティサービス)の提供 |
出典:株式会社ASTROFLASH「初号機開発に向けた資金調達を実施しました。」
PR TIMES「東京大学発位置情報AIベンチャーのLocationMind株式会社、エンジェルラウンドで4.0億円の第三者割当増資及び株式会社三菱総合研究所との協業検討を開始」2020年5月15日
まとめ
エンジェルラウンドとは、創業前後のアイデア段階にあるスタートアップに対する投資のことです。プレシードラウンドとも呼ばれており、シードラウンドやシリーズAなどとともに、投資ラウンドにおける1つの段階として位置付けられています。
エンジェルラウンドにおいてスタートアップが資金調達を行う際、投資家に経営権を奪わることを避けるためには、株式を渡し過ぎないよう注意することが望ましいです。1つの目安として、エンジェルラウンドでは、投資家に渡す株式を数%〜10%に収めておくと良いでしょう。
その他の投資ラウンドについては、以下記事で解説しています。併せて読んでいただくとより全体観を把握しやすくなりますので、ご一読ください。
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本記事を執筆している東京大学協創プラットフォーム開発株式会社(東大IPC)は、東京大学の100%出資の下、投資、起業支援、キャリアパス支援の3つの活動を通じ、東京大学周辺のイノベーションエコシステム拡大を担う会社です。投資事業においては総額500億円規模のファンドを運営し、ディープテック系スタートアップを中心に約40社へ投資を行っています。
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