ソーシャルイノベーションとは?求められる背景を解説【事例あり】

ソーシャルイノベーションとは?

ソーシャルイノベーションとは?

ソーシャルイノベーション(英語:Social Innovation)とは、日本語に直訳すると「社会的な技術革新」であり、社会問題を解決するための革新的な事業・取り組みなどをさします。

ソーシャルイノベーションによって、企業は、自社の利益を生み出すだけではなく、社会問題を解決できる価値を創出できる可能性があります。

なお、ソーシャルイノベーションを通じて起業した人は、社会起業家と呼ばれています(詳しくは、後の章「ソーシャルイノベーションを担う社会起業家」にて解説します)。

イノベーションの種類には、ソーシャルイノベーションのほかに、持続的イノベーション・破壊的イノベーションなども存在します。それぞれの詳細について詳しく知りたい場合は、以下の記事をご確認ください。

持続的イノベーションとは?破壊的イノベーションとの違いも事例付きで解説

破壊的イノベーションとは?必要な理由や種類、事例

ソーシャルイノベーションが求められる背景

本章では、現代においてソーシャルイノベーションが求められている背景の中から、代表的な2つをピックアップし、順番に解説します。

①SDGsの達成に向けて

ソーシャルイノベーションの考え方は、SDGs(Sustainable Development Goals、エスディージーズ)を達成するためにも重要視されています。

SDGsとは「持続可能な開発目標」のことです。2015年9月の国連サミットで採択された目標であり、国連加盟の193か国が2016年から2030年の15年間で達成するために掲げられています。環境・人権・貧困・インフラなど、世界中の人々が安心して暮らせる世界にすることを目指し、世界各国の政府・企業が足並みをそろえて実践しています。

SDGsの達成においては、社会問題を解決できるビジネスモデルが尊重されていることから、環境汚染・地球温暖化・エネルギー問題といった身近に存在する社会問題の解決に向けて、ソーシャルイノベーションを通じた事業展開がその一助となる可能性があります。

②少子高齢化による人手不足

現在の日本では少子高齢化による人口減少の影響で、人手不足に悩まされる企業・組織が増えています。これにより、もともと人手の力を活用していた企業・組織では、引き続き同じ方法で事業を進めていくことが難しくなっています。

今後の社会では、人手不足を解決する取り組みも求められるため、ソーシャルイノベーションの考え方を導入し展開する必要性が高まっています。

ソーシャルイノベーションを担う社会起業家

本章では、ソーシャルイノベーションを担う主体である、社会起業家の概要を解説します。

社会起業家とは?

社会起業家とは、ソーシャルイノベーションを通じて事業を展開する人のことです。例えば、社会問題の解決を追求するスタートアップ・ベンチャーなどが該当します。

社会起業家は、環境、貧困、フードロスなどの社会問題の解決を図るために新たな視点からビジネスモデルを生み出していく存在であり、明確なビジョンやミッションなどを持って事業を展開していることが多いです。

社会起業家になるには?

社会起業家になるためには、チャレンジと失敗を繰り返しつつ、幅広い視野で社会問題を見極める洞察力を身につけることが大切であると考えられています。

また、新たな事業・取り組みを進める過程では、否定的な意見に直面することも珍しくないため、強い志や情熱を備えておくことも望ましいです。加えて、周囲の人々から協力を得られるようなコミュニケーション能力などの素質・スキルの習得も効果的です。

そして、社会問題の解決に向けた具体的な行動計画を策定・実行する能力や、さまざまな人から共感を得てサポートしてもらえる意識づくりも大切です。

そのほか、日常的に海外・国内を問わず事業に関する情報収集を行い、ビジョンやミッションの実現に向けてチャレンジ・失敗を繰り返しながらチャンスを行う姿勢も備わっていることが望ましいです。

ソーシャルイノベーションの事例

ソーシャルイノベーションの事例

一般的に、企業が外部組織との連携を通じてソーシャルイノベーションを推進する方法は、おおむね以下の3つに分類されます。

  1. フィランソロピー(チャリティ)型
  2. トランザクション(取引関係)型
  3. インテグレーション(事業統合)型

1つ目のフィランソロピー(チャリティ)型は、企業から外部組織に対する資金提供が典型的であり、いわゆる一方通行の関係であるために企業の関与度が相対的に低いです。

2つ目のトランザクション(取引関係)型は、企業と外部組織との間に相互理解と信用関係が成立している関係であり、両者の価値観は類似していることが多いです。

3つ目のインテグレーション(事業統合)型は、事業統合レベルの強固な連携であり、ミッションや価値観の共有が進み、組織同士の関与が高まるうえに両者の組織文化にも大きな影響が現れます。①よりも②、②よりも③の順番で、企業と外部組織との連携の度合いは深まります。

上記を踏まえて、本章では、実際にソーシャルイノベーションの考え方を導入している企業の事例として、代表的なものを3つピックアップし、順番に紹介します。

  • 海洋プラスチックごみのリサイクル(伊藤忠商事)
  • ゆめちからプロジェクト(敷島製パン)
  • ペットボトル自動回収機(セブンイレブン)

これら3社の推進するソーシャルイノベーションは、インテグレーション型であると考えられています。

海洋プラスチックごみのリサイクル(伊藤忠商事)

社会問題化する海洋プラスチックごみへの対応策として、政府がプラスチックのリサイクルやバイオマス素材促進などの方針を打ち出している中で、伊藤忠商事はこれを新たなビジネスと捉えて社会問題の解決と持続可能な経済成長の両立を目指しています。

伊藤忠商事では、2020年11月より、日本の海岸(例:長崎県対馬市)に漂着するポリンタンクを主とする海洋プラスチックごみをプラスチック製品(ごみ袋、買い物かごなど)にリサイクルする事業を展開しています。

ごみ袋は対馬市をはじめとする海洋ごみの清掃活動を行うエリアに配布される予定で、買い物かごは対馬市や壱岐市などのファミリーマート4店舗ですでに利用されています。今後は、花瓶やボールペンなども市場に出回る予定です。

そのほか、2020年9月には、オーストリアのボレアリス社とのバイオプラスチック共同マーケティングを発表しており、現在はブランドオーナーおよびリテイラーと採用に向けて開発を進めている状況です。

参考:伊藤忠商事「海洋プラスチックごみを原材料に使用した買い物かごを長崎県対馬市などのファミリーマート店舗に導入」2021年2月9日
伊藤忠商事「再生可能資源由来バイオマスポリプロピレンの日本市場における事業展開について」2020年9月25日

ゆめちからプロジェクト(敷島製パン)

敷島製パンの「ゆめちからプロジェクト」は、国産小麦100%の製パンにチャレンジするもので、パン用国産小麦「ゆめちから」を中心に敷島製パンと複数の外部組織が結び付いたソーシャルイノベーションです。

このプロジェクトは、学生たち自身が「ゆめちから」を栽培し、収穫した小麦からパンを作ることで、人とのつながりの中で生きていることを学び、自分以外の誰かのために行動できるきっかけを与えることを目的としています。

また、このプロジェクトの発端には、敷島製パン社長である盛田氏の「国産小麦のパンを作り、多くの方々に食べていただくことで、食料自給率向上に貢献する」という強い思いがあります。これに賛同した行政・小麦流通業者・製粉業者・小麦生産者などが同社に協力し、農業試験場の試作段階であった「ゆめちから」が実用段階に至りました。

その後、敷島製パンの有する高い製パン技術により、現在「ゆめちから入り食パン」はテスト販売を経て通年販売されており、同社の競争優位性を担保する特徴的な存在として位置付けられています。

参考:「ゆめちから」栽培研究プログラム

ペットボトル自動回収機(セブンイレブン)

セブン-イレブン・ジャパンは、日本財団と連携し、店頭でのペットボトル自動回収機の設置を進めています。これは、海洋ごみ発生のメカニズムを踏まえたもので、河川を通じて海に流れ着くごみを減らすことを目指して実施されています。

そして、2019年6月より、セブンイレブン・ジャパンは日本コカ・コーラと連携し、世界初となる店頭回収したPETボトルを100%使用したオリジナル商品「セブンプレミアム 一 (はじめ)緑茶」の開発・販売を開始しています。

現在、これら3者の連携による取り組みが同時並行的に進行しており、対応が急がれている海洋ごみ問題に対するソーシャルイノベーションが、組織単独では起こり得ない規模・スピードで実現しています。

参考:日本財団 海と日本PROJECT「株式会社セブン-イレブン・ジャパン」

まとめ

ソーシャルイノベーションとは、日本語に直訳すると「社会的な技術革新」であり、社会問題を解決するための革新的な事業・取り組みなどを意味します。

現在、「SDGsの達成に向けて」「少子高齢化による人手不足」などを背景に、ソーシャルイノベーションの推進が強く求められています。また、ソーシャルイノベーションの考え方は、SDGsを達成するためにも重要視されています。

ソーシャルイノベーションを通じて事業を展開する人は、社会起業家と呼ばれます。社会起業家には、チャレンジと失敗を繰り返しつつ、幅広い視野で社会問題を見極める洞察力を備わっていることが望ましいです。

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