シリーズCとは?資金調達のシリーズDや以降の投資ラウンドまで解説
【目次】
シリーズCとは
シリーズC(英語:Series C)とは、スタートアップに対する投資ラウンドの1つの段階のことであり、シリーズBに続く資金調達をさします。スタートアップの中には、シリーズCの後に、シリーズD・シリーズE・シリーズFというように投資ラウンドが続く企業も存在します。
シリーズCの定義
「シリーズA・B・C」をはじめとする投資ラウンドは、明確に定義や区別がなされているわけではありません。とはいえ、シリーズCにおけるスタートアップは、研究開発型のベンチャー企業を除いて、黒字経営が安定化しており、IPOやM&Aなどを通じたイグジットを意識する段階にあるのが一般的です。
また、シリーズCにおける一部の企業では、資金調達を必要としないほど収益が安定するケースも見られます。ただし、こうした企業においても、市場の動向やニーズの変化などを受けて収益が急激に減少するリスクがあるため、資金調達の重要性は高いです。
そのほか、企業規模の拡大および日本全国や海外を視野に入れた事業展開などを進める場合も、追加の資金調達が求められます。こうした事情から、シリーズCにおける資金調達額は、数十億円程度に及ぶケースが多いです。
スタートアップの主な目的としてイグジットの達成があり、その実現に向けて資金調達を行います。スタートアップについて以下記事で解説しており、ご一読いただくと資金調達への理解がより深まります。
シリーズCの資金調達方法
シリーズCにおける代表的な資金調達方法は、以下のとおりです。
- シンジケートローン
- ファクタリング
- 金融機関によるプロパー融資
- 公的機関による助成金・補助金
- 投資家による投資
シンジケートローン
スタートアップの資金調達ニーズに対して、複数の金融機関が協調してシンジケート団を組成し、同一の融資契約書にもとづいて融資を行う資金調達手法のことです。スタートアップ側からすると、一度の融資で多額の資金調達を行える点にメリットがあります。また、シンジケート団のネットワークを利用し、メインバンクのみならず他の金融機関からも幅広く融資を受けることが可能です。
シンジケートローンの利用には事業規模や信用力など厳しい融資条件が設定されている場合が多く審査の通過は容易ではないものの、シリーズCの段階にあるスタートアップであれば資金調達を行える可能性は十分にあります。
ファクタリング
企業の持っている売掛債権を金融機関などに買い取ってもらうことで、売掛金を早期に現金化する方法です。資金調達方法として、最短即日から利用できる点にメリットがあります。
加えて、売掛債権の売却を通じてバランスシートをコンパクト化すれば、債権と運転資金の回転率が向上し、財務の改善につながる可能性もあります。さらに、貸し倒れや支払い遅延などのリスクを回避しながら処理に必要な負担を軽減し、スタートアップの経営により一層集中できるようになる点も、ファクタリングの大きなメリットです。
以上、シンジケートローンとファクタリングのメリットを紹介しましたが、「金融機関によるプロパー融資」も含めて融資全般を利用する際の主なデメリットとして、金融機関へ支払う金利やサービス手数料が発生する点が挙げられます。
例えば、シンジケートローンを利用する際は、金利に加えて、アレンジメントフィーやエージェントフィーなどの手数料を支払う必要があります。融資を利用して資金調達を行う際は、メリットとデメリットの双方を把握したうえで、実施を検討することが大切です。
投資家の種類
シリーズCの資金調達先である投資家の代表例は、ベンチャーキャピタル(VC)や事業に関連のある事業会社です。
ベンチャーキャピタル(VC)とは、スタートアップやベンチャーなど高い成長率が期待される未上場企業に対して、主に出資の形で投資を行う会社のことです。
評価ポイント
シリーズCにおけるスタートアップでは、顧客に製品を十分に利用してもらっており、PMFが進行している段階にあります。この段階にスタートアップが達すると、売上高や利益などの財務情報が蓄積されて、徐々に財務上の数値を用いて企業を評価できる状態に至ります。
また、シリーズCの段階に及ぶと、事業や製品に対する市場からの評価が可視化されることで将来の予測精度が向上します。別の視点からいうと、事業計画の精度が向上し、資本投下量について定量的に制度の高い議論が行える状況に至るのです。
なお、このように、財務上の数値で評価される状況がさらに進行すれば、上場企業として評価できるようになる状況に近づきます。
シリーズC以外の投資ラウンド
最後に、シリーズC以外の投資ラウンドについて、シリーズC以前と以降の段階に分けて取り上げます。
アーリーからシリーズBの間には、以下の段階が存在します。
- アーリー
- シリーズA
- シリーズB
アーリーとは、起業直後の段階にあるスタートアップに対する投資をさすのが一般的です。この段階にあるスタートアップでは、まだ市場を確保できておらず、赤字の状態であるケースがほとんどです。
シリーズAとは、プロトタイプが完成し、製品の提供を開始している段階にあるスタートアップに対する投資をさします。続くシリーズBとは、一定の収益を出せるようになり、ビジネスが軌道に乗っている段階にあるスタートアップに対する投資のことです。
投資ラウンドについては、以下記事で解説しています。併せて読んでいただくとより全体観を把握しやすくなりますので、ご一読ください。
シリーズD以降の特徴と事例
シリーズD以降のスタートアップでは、安定的な収益を出せるようになった状態にあるケースが多く見られます。そのため、シリーズCの段階でイグジットを目指すスタートアップも多く見られるものの、IPOやM&Aによるイグジットに向けて、十分な利益や売上を出すための資金が求められることから、さらなる資金調達を行う企業も少なくありません。
具体例を挙げると、フリマアプリを運営する「メルカリ」は、シリーズDまで資金調達を行った後、2018年に創業から5年強でIPOによるイグジットを果たしています。
そのほか、シリーズD以降の資金調達を行ったスタートアップの代表例として、以下の2社を取り上げます。
- CAMPFIRE
- スマートニュース
CAMPFIRE
2020年12月、クラウドファンディングサービスを運営するCAMPFIREは、約36億円(シリーズDで約6億円、シリーズEで約30億円)の第三者割当増資および、6億円を上限とするコミットメントライン契約締結による融資枠を確保し、合計40億円超の資金調達を実施すると発表しました。
本件で調達した資金は、同社のクラウドファンディングサービス「CAMPFIRE」を中心に、グループ会社の運営する融資型クラウドファンディング「CAMPFIRE Owners」や、株式投資型クラウドファンディング「CAMPFIRE Angels」における利用者のさらなる拡大に向け、事業基盤の強化などに活用するとしています。
出典:CAMPFIRE「株式会社CAMPFIRE、総額40億円超の資金調達を実施 「金融包摂」実現に向けてクラウドファンディング利用者拡大と事業基盤の強化」2020年12月04日
スマートニュース
2019年11月、ニュースアプリ「SmartNews」を運営するスマートニュースは、シリーズEにおいて合計100億円の資金調達を行ったと発表しました。調達方法は、日本郵政キャピタルおよびACA Investmentsをリード投資家とする第三者割当増資であり、主な引当先はグロービス・キャピタル・パートナーズ 、電通、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアムなどです。なお、本件で調達した資金は、グローバル開発体制へ移行していくためのタレントの採用および、事業成長への積極的な投資などに活用するとしています。
また、2021年9月には、国内外の新規投資家および既存株主を引受先とする第三者割当増資によって、シリーズFの投資ラウンドにおいて251億円の資金調達を行ったと発表しました。これは、国内スタートアップにおける1ラウンドあたりの資金調達額として過去最大級です。本件で調達した資金をもとに、スマートニュースは、アメリカにおける成長のさらなる加速化を目指すとしています。
出典:スマートニュース「スマートニュース、米国事業の加速のため、 シリーズEとして総額100億円の資金調達を実施」2019年11月19日
スマートニュース「スマートニュース、過去最大級のエクイティ調達となる251億円の資金調達を実施し、時価総額は2,100億円以上へ」2021年9月16日
DEEPTECH DIVE
本記事を執筆している東京大学協創プラットフォーム開発株式会社(東大IPC)は、東京大学の100%出資の下、投資、起業支援、キャリアパス支援の3つの活動を通じ、東京大学周辺のイノベーションエコシステム拡大を担う会社です。投資事業においては総額500億円規模のファンドを運営し、ディープテック系スタートアップを中心に約40社へ投資を行っています。
キャリアパス支援では創業期~成熟期まで、大学関連のテクノロジーシーズを持つスタートアップへの転職や副業に関心のある方とのマッチングを支援しており、独自のマッチングプラットフォーム「DEEPTECH DIVE」を運営しています。
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